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農業の流通問題(その1) − 第2回 大きく変わる業種・産業界

A 農協を取り巻く流通環境

 私たちの食卓や外食店舗に日々届く生鮮野菜や牛乳は、複雑な流通構造を持っています。日本人の鮮度や食味にこだわる習慣が、産地と消費の現場を複雑な経路で結んでいるのです。
 同じコメ、野菜であっても、産地や生産者、生産方法や形状によって価格は様々です。高級食材と呼ばれるような商品も徐々に増えて、食の多様化と生産・流通の複雑さは世界に類を見ません。農業の流通環境

 農家と呼ばれる農業従事者は、産業転換のせいもあり年々減少傾向にあります。労働人口約6500万人のうちで、農業従事者は250万人まで下がっています。しかも、兼業農家という一家の事業収入が農業以外に依存している戸数が80万戸、およそそれだけで160万人もいることになります。
 みずほの邦、と呼ばれたように日本の農業は特殊な扱いを受けて来ました。国際競争力も低く、価格硬直性も高いので、生産と消費を結ぶ中で市場(イチバ)と呼ぶ中間流通の構造が重要な役割を持っていました。イチバは国営、地方自治体運営、民間運営の3事業者によって、集荷、値決め、分配、備蓄の役割を担っていましたが、大手流通業者は都度の値決めでは経営効率が悪いので、直接取引を指値で行うようになり、いわゆる『市場外流通』が35%を占めるようになり、更に増加傾向にあります。
 生産~集荷~市場~分配~精算の仕組みを支えてきた農協の役割もまた大きく変わろうとしています。

 日本にとっての農業が重要なのは、食料の自給率確保と同時に明治以降の保守政権が農家を重要な支援者としてみていたからです。農協もまた、農林水産省の実質的な下部組織として機能しており、農家を顧客とした販売、代金回収、金融機能をもつ巨大組織になっています。
 今、TPPを契機とした農産品目の自由化がどこまで進化するかによって、日本の農業は様変わりを余儀なくされています。自給率を維持するためには、小規模零細事業者対策として農業の法人化を進めるでしょうし、市場外流通の低迷による事業収入の低下を防ぐには、6次産業化(産地直売)という直販機能の強化が必要になります。
 また、イチバという価格形成機能が市場外取引と相反する事態も、天候次第で頻発するようになると大手小売業や業務筋飲食店などからの安定供給要請や価格維持条件が厳しくなることが想定出来ます。

 自然と天候次第で生産量が様変わりする農産品に、安定・価格・品質の機能を要求する消費者からの対応には、「野菜工場」「国産・輸入食品」の一元的な品揃えを行える農業商社の登場が期待されるのです。

農業の物流問題

 世界の野菜果物と国産の農産品をどのように安定供給するか、そしてビジネスとして価格安定と付加価値増加のデザインを次回は考えてみましょう。

(イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント 花房 陵)