物流不動産ニュース

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産業問題 - 第4回 物流不動産&EC物流の解決力

世界ランキングではGNP総額で中国に遅れを取っても、一人当たり稼ぎ高で見ればはるかに凌いでいる。人口が違う、生活レベルが違い、給与所得が違う。それが我が国のOECD31カ国での順位狙いである。一人当たりGNP、一人当たり付加価値額、給与水準、世帯当たり消費額で世界に比べようというなら、まだまだ新たな産業が確かに残っている。

多いもの、普及率の低いもの、一人当たり消費の少ないもの、OECDランキングで出遅れているもの。

特に環境・医療・観光・教育産業で見ると、驚くほどレベルがまだまだ低い日本の現実に気づくだろう。

今まで日本経済を牽引してきた家電、自動車、住宅の人口普及率はほぼ100%で、もう買い替え需要しかない。人口が減りながら、それでも世帯数が伸びているという異常値が見られるものの、売る先は限られてきた。しかし、大学進学率は51%でOECDでは末尾から数えたほうが良いくらいに、高等教育は未熟だ。農水産業での食料自給率も40%でまだまだ開拓の余地はあり、林業では国土の70%は森林なのに造林業や木造建築物は極端に少ない。EUでは5階建ての高層建築とも呼べるような純木造建築でビルが建っているのにである。農業も菓子や調味料を見れば、日本でもトマトで2000億、じゃがいもで2000億の企業が存在している。

メガバンクは貸出先を探しあぐねており、海外からの渡航者は日に日に空港で溢れかえっている。ホテルや宿泊施設は足りず、病院もベッド数が絶対不足となっている。

日本中に100の空港があり閑散としているというが、航空機サイズごとに国際空港化すれば羽田、成田、関空の分散に繋がるのに、まだ未着手だ。韓国のように美容整形医院を併設すれば、世界の富裕層がアンチエージングや高度医療のニーズを持って来日するだろう。

ビジネスの目的は雇用拡大と事業の成長、そこに欠かせない利潤の追求というのが定番であろう。問題は元金がどこにあるか、というスタートアップが本質だと言える。継続企業とて、創業よりも守勢が難しいのは企業寿命30年説を見ずとも明らかであり、株式市場を観察すれば5年も勢いが続く企業は少ない。まさに景気循環ではないが、企業の盛衰や成長サイクルは極めて短期であることが明らかだ。高度経済成長期にはこんな不安は全くなく、勢いは毎年7%、8%の成長を遂げて今の経済特区中国の様相であった。

では、なぜ波は訪れるのであろうか。人気不人気、流行不易、安定した事業とはどのように捉えればよいのだろうか。食品工業は景気の波を受けない、と信じられている。それは、人口という胃袋がその事業規模を決めているからと言われてきた。昨今では、胃袋は数こそ決まっていても高齢化によって、少子化によって、その容積が小さくなっている。衣服・住居もまた、人口減少によって消費量の頭打ちが見えてきた。世帯数は不思議なことに、単身世帯、独居老人が増えたこともあり、世帯数は増加傾向にあるという。生活の質を求めたり、独居老人が増えているという成熟社会の特質かもしれない。

このようにしてみると、人口や消費の動向が産業を左右してきたと言えるだろう。人口が増える、世帯の消費動向が変わる、という素朴な消費者の動向が、車や住宅、衣料や食料の産業を支えてきたことがわかる。

いま、日本が直面している近代化衰退症状は多くの問題点を抱え、解決のための手法を模索している段階にある。基幹産業だった鉄鋼、自動車、住宅は人口構成の変化によって、海外市場を手に入れなければ日本独自では頭打ちである。幸いなことにアジア近隣諸国では、遅れてきた日本のような消費生活がこれから期待できるので、なんとか凌いでいるにすぎない。ただ、アジアを商圏に入れているのは日本だけに限らず、欧米とさらには母なる工場だった中国ですら、販売先の開拓に乗り出してきているのだ。

国内は頭打ち、海外は競争激化、すると規模はどうしても限界点が見えて来る。

日本はこの想定を21世紀初頭に気づいていたので、アジアの金融センターを目指し、ロンドンシティ、アメリカニューヨーク、中国上海をモデルにした金融立国を構想していた。実は、残念な状況にある。金融は金利や株価が膨らまないと旨味が出ないビジネスだからだ。

金融立国残念会を経て、次に期待するのは、観光・環境・教育・医療という成熟社会の必須産業での成長余地の模索である。この産業では機能競争より、感性競争、サービス強化にあったから、ECとは無縁だったと言える。しかし、だからこそチャンスが生まれてきている。旅行も切符もタクシーも、今やスマホで手配できるじだいだ。教育も観光もデジタル手段で多様化が期待できる。人が動けばモノも動く、物流が必要なのだ。産業はゼロベースで見直せば、ECと物流で活路が必ず開けるのだ。

イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント 花房 陵