物流不動産ニュース

物流、物流不動産、倉庫を網羅した
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IT業界 - 第6回 物流不動産&EC物流の解決力

情報産業は時代の寵児である。ITなくして、現代社会は成り立たない。幾何級数的に膨張するデータは、形が見えないが巨大なデータセンター、インターネットクラウドという物理的な機材の中に存在している。ハードディスクやサーバーマシンは、地球のどこかにあるだろうと思われるだろうが、実は倉庫という空間に保管されているのだ。停電リスクを避けるために、東京豊洲のアット東京は東京電力変電所の上部に構築された。電源ロスはありえない。

現在の経営資源は、人・もの・金・情報ではなく、人・マシン・データ・知識と言える。情報はデータであり、データは知識や知恵になる。ゼロと1で表される情報は、単なる数値ではない。基本はものの数であり、人の数、金の額であることを思えば、情報は物流と表裏の関係にある。そして、IT業界であっても<物流作業は欠かせない>。システムマシンというハードがなければならず、出力の紙が必要であり、情報収集マシンや制御する対象もまたモノや機械だからだ。

私の関わった企業では、情報システム部門の呼称を物流管理と呼ぶほどに、情報の発生や対象を物流に向けることが多いのだ。

IT業界は平均年齢が低く、そのために付加価値も一人当たり1000万円程度で企業が継続できる。この規模はトラック運送企業のトラック一台あたりの売上規模と同額である。IT業界の付加価値はプログラムという「見えないノウハウ」であるかもしれないが、そのノウハウがマシンや分析結果というレポート、出力用紙に表現されたときに「見える価値」が明らかになる。

携帯電話会社も寡占化しているが、無線基地局の開発ラッシュで競争している。ゲームメーカーも販促品や広告制作物で世に説いている。膨大な機材や制作物で溢れかえる物流施設が存在している。

かつてIT業界の雄であるソフトバンクは、ソフトウェア流通のためにCDやパッケージ専用の物流センターと専門会社を立ち上げていた。ソフトバンクフレームワークスは最大のソフト流通会社になっていた。そして、ソフトウエアという莫大な開発コストが大量のコピーによって販売されるとき、<収穫逓増>という新しい経済原理を生んだのだった。

現在のIT最大の顧客は金融機関である。金融情報や株式取引はまさに瞬間が勝負であり、光速の取引を支えるために休みなくシステムは動き、そして永遠の保守を必要としている。勘定系システムは多様な金融機関ごとに開発されてきたために、その保守や接続には莫大なシステム要員が必要とされている。

ITは人件費産業であることも確かであり、従事する要員の多さや勤務時間が開発売上に直結している。多くの人材を配置してプロジェクトマネジメントを必要とするのは、物流現場にも似ていて、ヒューマンリソース管理やレイバースケジューリングも物流現場では当然のごとくに利用されている。

ITが物流と似ているだけでなく、物流と組み合わさったのがネットショップと言えるだろう。アマゾンを筆頭に現代では最もホットなビジネスになっている。24時間365日国境を越え、扱う商品やサービスは無限大に拡張中である。しかも、物流の課題は即日配送、瞬間デリバリー、ドローンを利用した空間超越もスタートしている。

今、ITを情報産業と定めた途端にシステム単価で競争することになるが、システムを利用した物流との組み合わせを考えれば、アマゾンとは別の道を歩むことができる。生産、調達、受注、決済、在庫、配送にITの応用範囲は無限にある。サービスや公共サービスにもギャザリング、オークション、ノンストップでの提供が時代にニーズを生み出すことだろう。私たちの社会保障や納税、保険や医療サービスにも余地がある。ITと物流の相性の良さを見直すことで、新たな勝機が生まれるはずである。

イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント 花房 陵