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事実と意見を使い分ける − 第4回 物流不動産営業12の心得

 営業活動は顧客にとっての購買代行であるが、肝心なことは買う気になっていない顧客が多いことにある。ちょっと観るだけ、聞くだけ、調べてみるだけ、・・・・・財布の中身は調べていない、買う覚悟ができている顧客はあなたの前には居ないはずだ。
 そんな客はトオノ昔に自らが出かけてゆくから、あなたの前をずっと前に通り過ぎているものだ。
 これだけ有利、便利、お得、優位性があるとしきりに説得した証の提案書や見積を顧客に示すとき、これはあなたの意見に過ぎないことを知るべきだ。女神にしてみれば独断や偏見とも言える、と判断することさえあるのだ。

 意見は事実ではなく、真理でもない。正しくないといえば、そうかもしれない。少なくとも顧客という女神はあなたを心底信じるまでは疑いの気分が抜け切れていない。どこかに落とし穴があるはずだ、そんなにいい話をココに持ってくるはずがない、と。

 意見を出すならその背景にある根拠や資料、データや統計を10倍準備しておかねばならない。百聞は一見にしかず、というのだから、あなたの提案にはゾウのようなカバンに詰められた膨大な資料がなければおかしい。
 電話帳ほどのファイルを手持ちして、そのエッセンスがこれであると堂々と胸を張る態度が、信頼につながる。僅かな資料で真実を語るものではない、少ない 資料で提案を済ますのではない、使わずともすべての事実を調べたという証拠を持って商談に臨まねば、女神の疑いは決して晴れることはない。
 些細な質問にゾウのカバンが開かれて、分厚いファイルをめくる姿こそ、あなたの提案という意見の裏づけが証明されることになる。

 現代ならゾウのカバンはPCデータでも構わない。目前ですぐさま検索する態度こそが信頼を獲得できる姿だ。

 事実と意見、これほどあふれているのに上手く纏め上げる手法が見つからないのは、営業にとって悲劇だ。しかし、そのことを知っているのは顧客も同様で、自分の苦労を肩代わりしている姿を目前に見て、初めて購買代行の意味がある。
 とうとうとメリットや優れた提案を述べても疑いを晴らすことはできない。事実というゾウのカバンやPCに詰め込まれたさまざまなデータのボリュームに圧倒されるのが女神だ。
 職場で使った資料を常に携行せよ、根拠はいつでも示せるようにせよ、瑣末なニュースや事実データが無駄になることはないのだから、ゾウのカバンがあなたのスタイルとすれば良いのだ。
 事実を否定することはできない。事実の積み上げから生まれた提案は、どんな意見よりも聞くに値するし、代行の労を認めざるを得ないものなのだ。
(イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント・花房稜)