物流不動産ニュース

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ラストワンマイル問題 lastmile(第26回) 物流マネー70兆円のゆくえ

 

宅配業界の激震が続いている。残業未払い問題を抱えてしまったガリバーのヤマト運輸と物流施設運営にシフトを切って好調な佐川急便グループ、大型郵便局と物流センターを装備して営業面でのドライブがかかった日本郵便。ECネット通販がもたらした宅配最終戦争はまだ決着が見えていないが、独自の輸送連合を組立てつつあるAmazonと依然として再配達で苦戦している宅配事業者に解決策は見いだせるのだろうか。

軽く、安い商品がECの特徴であり、宅配運賃の負担力はもともとない。受益者負担であるはずなのに、再配達のご都合次第で販売している商品の評価まで物流影響を受けるからEC事業者も悩ましい。

宅配各社が入れ替わり、立ち代りに狭い路地やマンション共有スペースにトラックが出入りすることが社会問題化している。再配達と交通安全、ドライバーの労務負荷を下げるには地域ごとの専業事業者指定制度が有効になる。

日本郵便しか最終配送は行わない


という英断を退ける理由はあるだろうか。そのための融通は可能だろう。

配送業務の再委託は約款でも当然の理由であり、社会事情を優先すれば可能になる。事業協同組合を立ち上げずとも、地域事業者での協議事項で済むはずだ。しかも、地域ごとの業務量、輸送量による調整作業はかつての規制条件に当てはまっていた。

競争を促進するために規制を開放したが、時代は過当競争によって疲弊した事業者が続出している事態に直視しなければならない。
 
物流は生活と事業のインフラであり、安定的な運営を何より重視しなくては社会問題になり、すでにその許容を越えようとしている。完全雇用状態と労働人口の減少期を迎えた日本にとって、物流業界が人材を吸引できる余地はあまりにも少ない。生産性を高めて安定稼働を目指すなら、競争から連携、共同化へコマを進める時期になっている。

地域専業の最終配送事業者の選定は、入札方式でも十分に機能するだろう。独占事業が悪者だという誤解を解くためにも、物流規制緩和の歴史とそのマイナス成果を反省する時期になっていると強く思うものである。

 

<イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント 花房陵>