物流不動産ニュース

物流、物流不動産、倉庫を網羅した
最新ニュース・情報を発信しています。

  • メール会員情報変更
  • メールマガジンバックナンバー
  • ニュースメール配信登録

地方創生 - 第8回 物流不動産&EC物流の解決力

アベノミクス新3本の矢では、<GNP600兆円成長、女性の活躍、介護離職のない雇用>、を取り上げている。旧3本の矢が失速したから、再び景気回復を宣言しているのだが、今度は本物になるかどうか、世論ではほとんど当てにしていない様子が伺える。

明治大正昭和までは、国が描いた政策で産業や経済が発展してきたが、平成時代にはどれもこれもが失策続きと言っては語弊があるが国民の実感はそうだ。

1992年バブル崩壊以降で上手くいったためしはほとんどないからで、実生活でも景気回復基調や賃金の上昇など、ごく限られた業界でしか経験できていない。GNPも1997年をピークにして、今は500兆円を下回っている。豊かな生活とは経済を除く、という但し書きが必要なほどだ。

それもこれも大企業の新資本主義というか、不況ならリストラ、円安好況時には金融投資・M&Aの連発で確かに拡大していることはあれど、働く人が本当に実感しているものとは程遠い。東京集中のグローバル化がもたらした儚さがついて回っている。

産業空洞化はグローバル経済では避けて通れない。かつてのアメリカも苦い経験で工場が消失してしまった。再び復帰しているのは、高付加価値のIT産業や特殊なベンチャーと呼んでも良い限られた産業だからだ。

地方都市の若い労働力を当てにした工場はすでになく、駅前の衰退は随分前から始まっていた。人口が減ることが問題視されると、期待は依然として農業が残る地方に頼らざるをえない。そこで、地方創生が叫ばれているのだ。

東京近郊と地方都市の違いは写真や風景では気づかないほどに、画一化されている。ナショナルチェーンの飲食店舗と家電量販店、イオンとユニクロ、ABCストア、ニトリ、マツキヨが街並を作っている。地方は東京に憧れ、東京は大手企業に地方進出の支援を行ってきた結果だ。

なんと地方都市に空港が100もあることが象徴的だろう。田舎は意外にもアジア・アメリカに近いのだ。整備新幹線も青森から鹿児島まで連結し、地方の問題は直ちに別の地方に連鎖する。一部を創生するなら、情報はかけ巡り、不平等コールが沸き起こってしまう。同時進行が必要なのだ。

企業城下町を再び企業主導で復興させることは不可能だ。東京が産業支援で補助金をつぎ込むにも限度がある。巨大な箱物を建設しても自治体はその維持費が捻出できていない。住民が減れば雇用も税収も期待できないからだ。総人口が減る中で、過疎と集中、格差が問題ならば解決策はただ一つしかない。京都大阪神戸をまとめて一つの都市に再構築する案が、メガリージョン構想というもので、自治体の統合を意味している。交通網があれば、都市は独立ではなく統合すればいい。

大都市から地方への移住を促進し、雇用を作り出しながら定着させる大掛かりな仕掛けが必要なのだ。地方をそのままにして、そこの住民だけに頼り、補助金をつぎ込むのは愚の骨頂だろう。

元気な若者、まだまだ元気なシニア、森林資源や風光明媚な日本風景を必要とする観光客を送り込み、商業と農業とそれに続く産業を新しく創造するためには、何が必要になるだろうか。

コンパクトシティというコンセプトは、今までは全く違う意味で捉えられているが、本来は居住と産業を小さくまとめるという意味だ。リアルな生活とバーチャルな産業や雇用を再発明することが求められている。必然的に人の住む場所は集約され、ビジネスはECにつながることが必要だ。すると、何より重要なことは物流であることに気づき始めている。だからこそ、実験的に小さな物流拠点では集配、巡回、在庫の集中と物流に付帯サービスを追加することが始まっている。在宅確認や医療サービスの送り込み、物販とサービスの一体化が重要なキーワードになってくるのだ。

物流の複合化、総合物流サービスのメニューが間に合っていない現実に、気づいた者が勝者として君臨することになるだろう。

イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント 花房 陵