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少子高齢化 - 第9回 物流不動産&EC物流の解決力

少子高齢化は先進国が抱える構造問題である。農業から工業へ、そして商業へと転換が進むのは、都市への人口集中が原因であり、同時に家族構成に変化が生まれる。核家族化と言う呼び名が出たのは、昭和中期の一億総中流化の時代だ。労働人口が順調に伸びながら、ほとんどの職業が会社員、つまりはサラリーで生計を立てる家族が増えてきたからだ。

高度経済成長期には順調に人口が増加して、生産財は黙っていても売れていた時期がある。作れば作るほど売れるのは、消費者が増えるからであり、所得を消費できる労働人口が増えていたからだ。そして、経済成長はこの人口増加によるボーナスをもらう。一人当たり所得が伸びることを人口オーナスと呼ぶのだ。

いずれ、少人数家族ばかりになる事は予測できていたから、少子高齢化は産業進化に伴う資本主義の行方であるわけだ。

さて、日本の宿命ともいえる問題に物流が何か役割を見出せるとすれば、それは雇用の多様化とシニア労働者の受け入れであろう。物流機器やIT進化によって、元気な人であれば年齢を問わずに物流業務をこなすことはできる。必ずしも1日8時間週40時間労働を前提にしなくともシフト勤務やワークスケジューリングは十分に可能な職場が物流であるはずなのだ。

今は、女性やパートタイマーに多く依存している現場は多いと思うが、シニア層へのシフトはごくわずかな工夫と後押しがあれば十分に可能だろう。

出生率問題は女性の意識と社会の受け入れ課題が山積している。男女雇用平等法があるにもかかわらず、依然として男尊女卑の価値観は当たり前に横行している。ニュースでも子供の妊娠を職場に告げた途端に差別を受ける、マタニティハラスメントが、犯罪ではなく風潮のように扱われていることが大問題だ。

高度成長経済期の日本は地方農家からの次男坊を当てにした就職活動が活発だった。農業は言うまでもなく家族業務であり、生業であるから、大家族が歓迎されるし、育児に手はいくらでもありお母さんは安心して子育ても仕事もできるのだ。

農業大国だった時代に戻れば、子供は増えるだろうがTPP圧力によって、日本が再び農業大国に戻ることはできない。農業人口が200万人を切るのも時間の問題だ。

しかし、農業だけでない産業ミックスを再発明することは十分に可能だ。農業といえば米を思い浮かべるが、860万トンの米にどれだけの経済効果があるかは、実際のところ不明である。なぜなら、休耕水田が多過ぎるからだ。作らないことによる補助金や免税効果によって、農家は米を作る意欲や動機を失う状況にあるのだ。

ただし、トマトとジャガイモを見て気づくことがある。カゴメもカルビーも日本の契約農家と生産協定を結びながらそれぞれ2000億円企業になった。

畜産農家もハムや加工食で順調である。それなのに食料自給率は39%というところに着目すれば、農業の再発明は十分に可能だ。輸入を禁止するのではなく、自給率を高めることの新しい価値を開発して、野菜、酪農、その餌を輸入に頼らない政策と食品工業の再構築を図れば良い。

農業も休耕水田を解放して野菜や畜産用の牧草、そして大豆と輪作を行うことで自給率は必ず高まることになる。農業と畜産と食品工場を産業マップに描けるなら、地方創生も夢物語ではなくなる。お母さんは安心して子育てや女性特有の職場作りを実験できるだろう。

夢ではない、デンマークが実際に取り組んでいる事例があるのだ。そして、人口が減らずに子供は増えているのだ。

農業の再発明、食品工業の地域ごとの再構築、多様化する雇用の推進とくれば、ここに物流の役割がないはずがない。

かくして少子高齢化にもITと物流が出番を待っていることになるのだ。

イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント 花房 陵