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物流合理化のデザインを変える − 第8回 クライシスマネジメントと物流対策

 合理化とは出力のための、投入単位をひたすら低減化させる技術だった。
同じ売上なら、一層の経費削減が分かりやすい。成長や拡大の時代にはこれが黄金率、だれも疑うものはなかったし、経営原則に経済性というのはこのことだった。
 ところがこのような部分の最適化という、要素還元法と呼ばれる行動原則にかげりがでてきた。改善の積み上げが、結果として何をもたらしているかまでを視野に入れなければならないからだ。当然といえば、そうだが物流は手段であり、目的は経営の効率化ではない。
 製造や販売の目的は、経営の効率化だが、経営の目的は存続であり、極大でなければならない。つまり、存続と成長の指標は利益であり、利益率でなければならない。
 物流効率化が利益や利益率に何か影響を及ぼすことができるだろうか。
物流合理化によって、利益が続伸した企業があるか、あっても2年は続かない。
物流コスト比率が下がっても、営業利益率が向上した企業はない。あっても2期は続かない。
 そうであれば、物流合理化の目的や手段としての目標設定を誤っていることに、いつか誰かが気づかなければならなかったのに、どうしてなんだろう。

 物流は経営の手段であり、物流改善は目的にはなりえない。

では、経営の利益や利益率はどこから生まれるか。ここには要素還元の手法を使ってみよう。
売上から経費を差し引いた結果が利益である。2%程度なら、金融と同じだから論外の業績と言えよう。こんな成績でも許してくれるのは、業界内部や監督官庁の目こぼしだけだ。
 低い利益率でも良しとしてきた、歴史や背景には日本独自の文化がある。アジアや世界では通用しないし、低い利益率では株主は許さない。だから、日本でも営業努力や生産改善よりもM&Aが横行するようになってきているのだ。
 売上でもない、経費でもないなら、一体何が利益と利益率をコントロールしているのか。
それが、製造速度、販売速度というダッシュボードなのである。

 今週の売上が先週より増えれば、速度が上がったといえる。目出度いはずだが、経費はどうなっているかが見えない。経費を掛けて売上を上げても、利益は出ないことのほうが多い。
 売上の速度が上がって、在庫が減れば特売の疑いがある。安売りではないか。こちらも利益が残るかどうかが不安だ。
 今週の在庫が先週より増えれば、生産速度が上がったといえる。生産効率が上がったと見えなくもないが、果たしてそうか。販売が不調なのではないか。販売計画以上の生産を行っているのではないか、ルール違反の疑いがある。生産コスト削減のための計画的増産ではないのか。
 週ごとの売上推移と在庫推移を見比べることで、利益の残り具合が変わる。ここに最適の計画がある。つまり、生産と販売の速度がバランスよく運営できたとき、その瞬間だけに利益が確保できるのだ。
 売上も在庫も物流情報。物流が企業利益や利益率経営を支えている。知ってましたか?

(イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント 花房 陵)