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日本再生のシナリオ − 第11回 クライシスマネジメントと物流対策

 もうすでにお気づきかも知れないが、政府や経済産業省から発行されている新経済成長戦略では、既存の産業について触れているところは一切ない。
 さんざん助成や補助金で、自動車、家電、住宅産業と支援を続けてきたが、今やほとんど効果を生まずに、主力産業は自ら空洞化、日本を離れる事に突き進んでいる。
 ものづくり大国を目指す、というスローガンは、職人技の中小企業や全国の伝統工芸を支えるかけ声に終わっていて、バイオやエコ、先端医療などへの支援策は、実際にもモノづくりではない。コトつくり、サービスつくりと言えるだろう。
 最近の円高傾向への対策も、口先介入というアナウンス効果しかなくて、ほとんど長続きしていない。80兆円もの準備基金と毎回毎回数兆円規模で介入する=ドルを買って、円を売る=ますますドルが貯まり、仕方がないから米国債を購入しているのが実態。

そもそも、世界で見れば円高なのは相対論であり、ドルが信頼を失っていることになるからだ。円高を被害者意識で見るのは、かつてと言うほどずいぶん昔、我が国の貿易相手がアメリカ一辺倒の頃を思い出しているに過ぎない。
 対米貿易額はもうすでに極端に下がってきており、反面急増しているのは、対中・対アジア向け貿易なのだ。ドルによる決済だから、円高では輸出は痛いこと は痛いが、日本のGNPに占める貿易収支合計は2%にもならないので、輸出が増えれば輸入も増える構造では円高は、むしろエネルギー輸入に好影響と言える のだ。
 教訓としては、日本はとうの昔に貿易立国から脱しており、商売の先はアジアだが、そこではあまり儲けさせて頂けていない。

 さて、東日本震災から全国に広まった一層の不況感は、生産工場での復興が進んでいるとはいえ、自動車も家電も製品ラインナップを大幅に変えてし まった。自動車の生産拠点は徐々にアジアに移行して、家電は製品ラインナップを大幅に変更して、白物家電は中国提携先に委ねており、大型テレビを中断する しパソコンも生産縮小へ向かっている。住宅も新築着工は、東北を除けば低迷するし、住宅省エネポイントは全く効果が出てこない。
 日本が増税や政治の低迷にぐずっている間に、世界はすでに進んだ。BCPという緊急政策によって復旧してきているが、実はすでに周回遅れになっていて、元に戻すだけでは競争はもう終わろうとしている。
 それは、工業であり、製造業であり、流通業である。残念なことに、これらの産業は増産することや販売拡大することは、日本国内では自助努力で不可能と なっている。マーケットが足りない、顧客が足りないのだ。だから、残されている道がM&Aによる企業統合であり、これによりコストを下げて、合算したマー ケットで収支を合わせようとしている。
 脱工業、脱生産、脱流通というのが、日本再生の根幹にあるのだ。では、物流の出番がなくなるではないか、と悲観することはない。
 製造流通の低落を支えているのが、医療教育観光サービス全般なのだ。GNPは成長鈍化しているけれども、500兆を大きく下回わるまでには至っていない。
 消費者は購買を止めたわけではなく、消費の向かう先が医療保険観光行楽飲食と変わったのだ。災害の保険支出も障害の医療費もGNPなのである。
 そして、これらの産業にも物流は不可欠なのだ。大量一括の運んでお仕舞い、という物流から、サービスパーツやメンテナンス、印刷物、ビジネスサプライな どの多頻度付加サービス付の物流へ代わってゆこうとしているのだ。いかに運ぶか、何をサービスに載せるか、何が提供できるか、どこに顧客がいるか、そして 支持されるための必要条件は何か。
 考える?違う、知的財産というアイデアやノウハウがこれから大いなる価値を持つ時代に入ってきたのだ。原材料素材の物流から製品物流へシフトが行われ、これからは利用サービスの物流へ進化を進めてゆくことになるのだ。
 これこそが、日本の描く新成長戦略の根幹にある物流サービスの姿だ。

(イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント 花房 陵)