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21世紀で学んだ技術 − 第10回 クライシスマネジメントと物流対策

 グーテンベルグの印刷とコンクリートの発明は、20世紀を反自然、対自然の時代にしてきた。自然の流れに逆らい、天然を自らの ものに制御して、超越しようというのがそうだ。記憶や知識の流布を容易可能として、文化や技術は世界に正確に広まった。知識の敷衍は価値観の統一をもたら している。経済性合理性という価値観は、世界を席巻してゆとりと余裕を排除してきた。構造物は自然に逆らい、自然を制御して、人類の意図を自在に発揮する ことができた。記憶は時間を超え、自然の脅威を押さえ込んだ建築物は、火を手にしたヒトの営みをさらに完全な形に変えてきた。思うままというのが、それ だ。20世紀は人類の欲望が最高潮に花開いた時代と言えるだろう。
 2001年、地球人口は60億人を越えて、命を維持することすら厳しく、正規軍ではない紛争が深刻化してきた。欲望の抑制が求められ、自然との調和や人 類の協調が必要になった。地球には限りがあることの現実も証明されて、わがままや欲望をひたすら実現することは困難になった。
 医学は生命の神秘を究明しつくし、技術と科学で星にも手が届き、宇宙の営みを理解したあげくの、自然との共生という終着を目指し始めている。
 産業は国を離れ、経営は仮想となり、こだわりより真実を求めるようになっている。
 企業は蓄積だけを目指し、そして成功しているのがアメリカである。他にはまだない。
 500$のiPAD原価が160$、日本の部品が60$では、メイドイン台湾にこだわることは無意味であり、成功は利益成果という資本の勝利にある。知財による粗利益率が68%となって、工業化時代の勝負はすでに決着している。
 かたや、世界の自動車産業を恐怖に陥れた我が国総合家電連合体のルネサンス那珂工場地震被災は、どれほど脅威であり優位であり、並ぶモノがないはずなのに、いつまでも赤字体質から脱却できる目処がない。ものづくり大国を目指すことの意義があるのだろうか。
お人好し産業をどれほど自慢しても、もの作り大国としての資本は負けている。 
 利益は難しいか、儲けることは悪なのか、どうすれば資本は蓄積されるのか。生産と営業の科学手法は、どこで間違えてきているのか。21世紀には証明されなくてはならない命題の代表である。
 売りて喜び、買いて喜びとは、奉仕や自滅の標語ではなく、長く続くための極意であったはずが、景気動向という波に左右される経営しか存在しないならば、いつまでも21世紀は訪れないだろう。
 2つめの10年期が始まった。作り方、売り方の反省をせずして、21世紀はやってこない。業務改善とか生産改革とか、自らを糺すだけでは、自然や宇宙と の共生にはならない。行動原理には法則があり、原則があり、それは単純であり、本質的、根源的に永遠でなければならない。
 売り方、作り方を知り得るのが物流部門であるといえば、驚くか。
 売り方、作り方を批判したり、冷やかしてきたではないか。どれが正しいのか。
 物流の情報を駆使して、利益の確保できる作り方、売り方を見つめることが、経営の真実への道ではないか。
 売上と経費と在庫をダッシュボードとして眺めれば、適正規模での利益の極大化は可能だろう。なぜなら、今まで3つのメーターは存在しなかったから。
 誰もダッシュボードを見ずに、操作と意思決定を行ってきたのだから。売上は利益をもたらさず、経費削減は在庫削減をもたらさず、在庫削減が利益につながらないのは、本来あるべきはずの行動原理に反するからだ。
 21世紀の技術は、行動原理でなければならない。自然との共生はその最初の発見なのだ。

(イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント 花房 陵)