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宅配サービスは公費で publicservice(第25回) 物流マネー70兆円のゆくえ

平成のカウントダウンが始まり、一世代のテーマが終わろうとしている。世界大戦の経験が昭和を象徴していたから、新元号は平和を願う意味であったが、どうであっただろうか。

バブル崩壊以後は偽りの政治と経営が続き、世界地域も触発の危機を繰り返している。独裁政治の傾向も見て取れなくもなく、戦争と平和は対義語ではないが、不信と混乱は収まることがなかった。

日本経済は依然として低迷感から抜け出すことができず、政策立案も緩やかなインフレを放棄してしまった。経済成長は足踏み状態であるが、統計的にもすでに完全雇用は実現しており、経済への役割は終わっている。福利厚生での非正規労働者の賃金格差が生活保護給付と合わせて弱者救済のための新たな問題になりつつある。あと10年後の長期的な課題や問題意識は徐々に薄れてしまい、目先の課題解決ばかりに注力するのは決して望ましい姿とは言えないだろう。

地方都市の産業喪失と疲弊感は、シャッター商店街以上に生存不安までも引き起こそうとしている。宅配便の人手不足による料金値上げがどこまで効奏するかは未知数だが、民活に委ねるレベルを超え始めている。買い物難民や再配達のためのエネルギー損失、疲労する宅配ドライバーを救うには地域の共同配送、事業組合などの提携連携などの取り組みがあまりに遅々としており、収束解決の目処が立っていない。

そもそも郵便と物流は一体であったはず


東西ドイツ郵便の統合を契機に進化し続けたドイツ郵政公社(ドイツポスト)は、規制緩和にともない民営化を遂げ、拡大を続けている。気がつけば世界各国の物流をM&Aで統合を繰り返し、世界一規模の物流企業に成長した。

我が国地域宅配のドライバーの絶対的な不足を解消するには、地域郵便局での郵便と宅配の共同運営が最終的な解決策になるだろう。長距離ドライバーは鉄道と郵便トラックの連結によって輸送量の拡大と効率化を狙えるはずだ。物流は規制産業であったが、再び調整規制によって再生を果たすことができるはずだ。

そもそも日本郵便は民営化によってゆうちょ銀行とかんぽ生命保険が稼ぎ頭となり、郵便事業の不採算をカバーしているという。信書だけでなく物資輸送は国民の生存問題となるわけであり、上下水道・電気ガスエネルギーに匹敵する社会インフラ事業でもある。

とするなら答えは歴然であり、物流サービスの公営化を目指すべきものである。財源は福祉、生活に関連するものであるからトービン税を充当すればよく、その規模は70兆円を優に確保できるものだ。公社事業を逆行させるのは、民活では解決できない物流の人手不足問題があるからであり、物流企業経営の低下ではないことを改めて議論すべき時期になっている。

まずはじめに、最終配送網の協同組合化を通しての郵便と宅配の同時配送が必須であり、次に幹線郵便列車と長距離輸送トラックの統合が現実味を帯びるであろう。物流サービスという国民生活に根ざしたインフラを零細事業者の小田原評定に任せることが本来の間違えであったのだ。

 

<イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント 花房陵>