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シニア市場は100兆円 senior (第38回) 物流マネー70兆円のゆくえ

超高齢社会となった日本での流行や文化、趣味趣向や価値観は年齢と性差によることが多い。だから、何事もステレオタイプで考える必要はないが、日本での生活習慣や消費感覚は世界ではほとんど通用しない。父親と高校生の娘が買い物に行くことを想像するだけでその後の進展を笑えることだろう。異例づくしであることは、決して日本文化の違いだけではなく、年齢格差によることが多いはずだ。

日本でも高齢者がすべて健康不安を抱えているわけでもなく、入院加療を続けているわけではない。シニア層の約1割が健康不安を持ち、同じように約1割がすでに入院加療しているとしても、残り8割はニューファミリーやヤングと同じような消費者行動を取ると言っても良いだろう。ただし、加齢による制限があることに違いはない。同時に高齢であるがゆえの消費行動の特徴もあるはずだ。

マーケティングの理論によれば、顧客層の少子高齢化が弱点とみられるなら、それをリスクマネジメントの手法によって克服することも可能になるはずだ。

実際問題でもエコカー販売や観光、旅行宿泊や高級飲食店の主流顧客はシニアに移行している。同様に東京銀座通りの顧客名簿は、その電話番号が03区域の東京都内ではなく、04〜で表される地方からの顧客層で占められている。

首都東京の大口消費者は都内在住ではない、というのではないが消費者の主体がシニアに移行していることをもっと強く意識したビジネスを再構築する必要があるのだ。

むしろ、現在はまだまだ試行錯誤の段階であり、ヤング世代やニューファミリー世代からの移行が遅れていると言っても良いだろう。

顧客セグメントでは世代間の併存、共存が収束点ではあるだろうが、ちょうどアメリカの復活が農業・自動車・鉄鋼・石炭・石油という重厚長大産業から、カリフォルニアのITビッグ5(Apple、Amazon、Google、Microsoft、Facebook)企業に牽引されたように、シニアとヤングの並列化が強みをもたらすことは明らかだ。象徴的な出来事は、AppleのiPhoneがシニアでも子どもでも、手にした途端に取説やマニアルなしでもすぐに使えるほどに単純化されていたことである。これをユニバーサルサービスと呼ぶことは後付だった。分かりやすい商品、親密さや馴染みはすべて世代に共通していたことを証明したに過ぎない。

消費者の主役がシニアに移行する中で、依然として小売流通業では大きな流れがまだ変わっていない状況に見える。それは、小売業の原則である<立地と品揃え>にいつまでも関心が集中していることだ。

ECやネットショップ、オムニチャネルという新しい店舗や小売業のスタイルが変わりつつあるものの、それらがシニアを意識しているようにはみえない。

余談ではあるが、ECネットショップでの売れ筋商品、ヒット商品の共通キーワードは「痩せる、ボケない、きれいになる」であり、自己責任や効能無責任なものが溢れている。

家計消費の上位群からその傾向を整理してみたい。いわゆる衣食住への出費額は、世代に共通化していると見られるからである。家計消費調査結果より、総支出の38%を占めている。家計消費総額300兆円のうちの106兆円である。新たなアプローチが求められる理由がここにある。

 

<イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント 花房陵>