物流不動産ニュース

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人手不足 - 第10回 物流不動産&EC物流の解決力

江戸時代の飛脚も早駕籠も宿場で担ぎ手が交代していた。今、すべての産業で人手不足を恨まれているが、どのような仕事も毎日8時間、週40時間の集中勤務が必要なのだろうか。企業は「人材こそ全て」と常に言うが実のところは、「都合の良い人材が欲しい」と願っているだけではないか。労働の多様化を無視していると言えないだろうか。

誰かの都合を分解してみると、長時間一律勤務を願うこと自体に無理がある。現在の日本の失業率は男女ともに3%台と実態は完全雇用状態にある。つまり、働きたい人にはすでに職があり、働かないでも済むような人(自発的失業状態)の雇用環境にあるわけだ。

都合の良い人手の不足を嘆くなら、<都合について改める>必要がある。つまり、まずは8時間拘束という枠を外し、仕事を分割することだ。物流業務なら集中センターから分散化に戻してみることだ。

優秀な人材は企業業績にとってのスターではあるが、実は雑用にも速さを発揮していることに気づかないか。

製造業、流通業、研究職、計画職などの職務は多くあるが、優れた人材は「1を知って10をこなせるスマートさ」が確かにある。同時にどのような作業にも能率と効率を発揮しているであろう。<一事が万事>という現実感は人材にも当てはまるものだ。

すると、仕事を分割することができる。そして、その雑務や前作業、後作業、記録や報告業務だけを切り離すことができるだろう。そこに短時間労働、週不定期労働という仕事を割り付けることができるなら、雇用や就業のチャンスは必ずある。

トラック輸送は支店や拠点で運転手を交代させる方法は昔の飛脚、早駕籠と同様だ。物流作業も段取りと伝票事務、入荷作業と出荷作業は分割できる。

<配送拠点・支店がない、作業の標準化と単純化ができていない>、と課題を明らかにすることが重要だ。

なぜなら、人手不足対策のほとんどが「居心地の良い職場を作り、雇用条件待遇を改め、魅力的な企業に変身させよ」と、時間も金も決意も努力も必要な原理原則を説く指導者しかいないからだ。確かに正論ではあるが、そんな悠長なことは言っておられず、しかも残されている時間がないのも事実だ。

そんな時間を費やす代わりに、ワークシェアリングの発想を手に入れよう。倉庫拠点の分散と分割を視野に入れよう。規模の経済性から短時間不定期労働で募集をかければ、多くの女性やシニアが応じて来るだろう。

<人はパンのみのために生きるにあらず>とは、労働が人によって全く異なる意味と意義を持つものであることの証拠である。

長距離輸送のドライバーに交代する支店や拠点がないなら、同じ悩みを持つ企業間連携を働きかけよう。

中小企業の競争戦略には、ニッチ狙いとネットワーク化による連携が必須であろう。自らが土俵を囲い、そこから出ることを嫌うなら、先越す仲間に置いてゆかれるだけである。

ECは商談のツールであり、連携や事業共同化の交渉に最適な手法である。物流現場は常に標準化と単純化のネタで溢れている。

ワークシフト、ワークシェアリングは外食、食品工業、給食・弁当製造、医療現場、土木建築、教育、官公庁では当然の働き方になっている。事例や先例はどこにでもあるのに、取り入れることを嫌い、自社の都合をいつまでも言うなら、それは無い物ねだりであろう。

少子高齢化、人口減少でも自社の魅力を高めることに自負があるなら、その道も確かにある。その代わりに現場と顧客がいつまで待ってくれるかという不安に苦労し続けるしかないだろう。

イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント 花房 陵