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品質へのこだわり - 第12回 現場のスローガン 物流改善12の視点

圧倒的な生産性を高める手法として、トヨタ方式が挙げられています。郵便局も銀行も生産工場も食品スーパーも、この方式が劇的改革をもたらすとして、さまざまな取り組みが行われているのです。

作業動線や作業の一つひとつを分析して、常に新しいやり方を研究するのは改善手法なのです。自動車生産で培った日本の技ともいえるトヨタ方式でも、自動車や製造工場に共通していて、しかも物流現場と全く異なる環境があるのです。それは、仕事が計画的に進められるという大前提です。  

本日の生産、本日の業務、本日の総労働時間と総工数の計画というのが、工場では当然の常識。すべてが計画、時間と共に予定が消化されてゆくのです。この仕事が終われば次に行く、次のそのまた次も計画に示されている製造工程と物流現場の違いは何でしょうか。

「次が分からない」、これが物流現場なのです。指示書が遅れる、入荷が遅れる、出荷の順番が変えられる、予定の人員が来ない、来ても使えない、多すぎて手待ちになる、・・・・予定が最初から順番違いになるのが当たり前の物流現場。そこに科学的な工法が使えるか否か。

作業指示書や計画書が無くても品物は出荷しなくては、仕事は終わらない。せっかくの受注だから、営業さんの苦労を実らせるためには物流ががんばりを効かさなければならない。昨日もがんばれたんだから今日も同じようにミス無く、能率良く、同じように終わらせなければならない。しかし、時間がない、ヒトが足りない、機械がうまく働かない。・・・・物流現場では昨日と同じ事が今日は難しい、という現実があるのです。同じ事を繰り返すという、再現性が最も難しいのが物流現場なのです。それでも品質は維持しなくてはならない。そこには科学よりも人情や根性、努力が必要。乗り切ろうという意欲と強い心が何よりも必要。機械と情報と伝票があっても、作業者の意欲が弱まればすべてが下がってしまう。机の計算が活かされない現場の苦労がここにあるのです。

今日の仕事を終えて終礼を行うとき、本日の実績と昨日との比較を行うセンター長がいる。常に比較、いつも進化と向上を目指す姿勢は現場でも鬼軍曹と言われるほどです。しかし、彼の心意気は「良い仕事を残したい、販売や生産に負けない価値を生み出したい」そのためには、生産性や品質の向上と進化、進歩を記録してゆくしかないと言う。

改善は不都合を直すことと言うが、緩い弱い感性なら改善テーマすら見つけられないでしょう。今のままでも充分だ、と思いこんだ途端に進歩が止まるからです。

仕事を量り記録を残すことで、生産性の変化と品質のブレが落ち着いてゆくものです。何も心掛けなければ、何も変わらず、ただ漫然とこなしているだけ。事故やミスはある確率で起きるし、人は時間と共に消耗して脱落し、機械は性能を下げてゆく。自然と去年の成績を維持することすら難しく、言い訳ばかりを探そうとしている者も出てくるのです。

 仕事の醍醐味は自分でどこまでコントロールできるかにありますね。指示だけ、命令だけを消化するなら、自分が機械になってしまう。プライドや職業への誇りをどうやって実現してゆくのか。真に考えている人は悩み、試行して変化を記録する。整理整頓すら他人と比較して、自分の位置や意欲を確かめようとするはずです。自分の位置を知るためには、評価や比較という尺度を持ちたいと願う人は少ないかも知れない。だからこそプライドある仕事ぶりは目立つ。

こだわり、がんこ、うるさい屋、・・・・鬼軍曹と言われなくても、言葉に出さない決意や約束がある。声が大きいだけなら現場には不要だし、言うだけで実行できないなら反発される。

積み上げ型の実行を続けるためには、何よりも良い仕事を残したいという決意が必要です。小さな声でも心に残る誓いがあれば、仕事ぶりや態度、表情や発言が変わってくるもの。仕事の品質へのこだわりはすべてに勝る要素であり、現場で感じることのできる空気のようなものなのです。

(イーソーコ総合研究所主席コンサルタント 花房 陵)