物流不動産ニュース

物流、物流不動産、倉庫を網羅した
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卸売業 - 第3回 物流不動産&EC物流の解決力

メーカーと小売の間にあって、商品や資金、情報や物流を代行するのが日本独特の業界で、問屋・卸(おろし)と呼ぶものだ。昭和30年代、大規模小売業のダイエーが登場して、小売がメーカーと直取引を開始した時、「問屋不要論」が盛んに言われた。<これからの問屋は物流機能で勝負する>という宣伝文句が幅を利かして、全国に巨大な物流施設を開発したのも大資本卸であった。すでに過去の話題のようであるが、現代もこの競争に明け暮れており、巨大化イコール統合合併が進む。巨大化の道を描けない問屋は自然消滅の運命を辿るばかりなのだ。日本の卸に未来はあるか?

競争戦略には強みを生かす原則がある。メーカーが直販を行うには物流機能がお粗末だ。小売が品揃いを増やすには資金力がいくらあっても足りない。物流には情報網が欠かせず、EOS、EDIは標準機能になった。それでも卸業界の経営は厳しいという。

<強みを生かせていない>、ということなのだろうか。

卸はN対N(多くのメーカー、多くの小売業)をつなぐHUBの役割を担っている。それなのに業界にとらわれ、日雑・加工食・飲料・衣料・医療・建材・鉄鋼・部材など、取り扱い商材を自ら狭めているようにしか見えてこない。かつての総合商社は「ラーメンからミサイルまで」と幅広い産業商材を扱い、確固たる地位を築いてきた。総合卸の進むべき道は、総合商材卸なのではないか。一つの企業が様々な商材を同一のシステムと物流で流すことができるなら、日本にそれを期待するメーカー、小売はまだまだ存在するはずだ。何より家計消費がGNP500兆円の6割を占めるから、卸の寡占・独占に至るにはまだまだ余地が残る。

大型小売業がメーカー取引を始め、メーカーも直販を始める300兆円を巡った大競争時代がきている最中で取りうる戦略は、同業共同ではなく、異業種共同という巨大化戦略であろう。

食品卸と住宅建材卸の共同化への実現課題は何か。総合商社取り扱い品目の全てを網羅する総合卸の姿とはどのようなものか。
金融機関を巻き込んで、販売代金決済、仕入れ代金信用供与、在庫評価を基にした運転資金の提供など、世に溢れている流動性資金を高回転する<カネの卸>という場面が想像できないだろうか。

卸は取り扱い商品力と小売店舗での実売支援としての棚割りや販売協力を行ってきた。その目的は、小売業の<売上拡大、利益拡大>であり、シンプルな構造だ。

売上拡大には様々な経費が必要であり、利益拡大には多くの投資資金が必要だ。卸の真の姿は、資金供与であること、しかもその資金は市中でわずか2%前後の金利で獲得できる。金融機関は預貸率70%低迷であり、貸出先確保に苦戦しているのだ。日本銀行準備率が0.1%ということは、1億の預金があれば、1000億の貸出余力があり、しかも金利は2%という好条件。

「カネがメーカーを潤し、カネが小売を成長させる」原点に立ち戻れば、担保や信用力で勝る卸の登場場面は少なくない。

世に溢れるたくさんのモノを扱うのが卸なら、カネを扱わない理由がないはずだ。ECと物流施設にカネを組み合わせれば、最強のビジネスモデルが作れるはずなのだ。

イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント 花房 陵