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国際物流総合研究所株式会社 小泉 武衡主任研究員 − キーマンに聞く 第21回 

 “トランクルーム”と一言でくくられることが多いが、実に内容は様々。段ボール1個から保管してもらえたり、区切られたスペースを借りたり、コンテナを 1個借りるというものもある。運営会社も倉庫会社、不動産会社、ビルのオーナーということもある。そのため、一時期、誰もが「トランクルーム」という言葉 を使いビジネスを展開し、品質の悪化を招いた。そこで決められたのが「標準トランクルームサービス約款」(昭和61年告示)。トランクルームサービスの品 質確保を狙った。この約款の作成に携わった小泉氏に、当時のトランクルーム事情と、最近の市場動向について聞いた。

koizumi

標準トランクルームサービス約款の作成について語る小泉氏

 ―そもそもトランクルームとの出会いは。

 小泉 寺田倉庫にいて、会社がトランクルーム事業を開始した。当時の社長から、営業強化の指示がありビジネス に参入したのが、トランクルームとの出会い。昭和50年ぐらいだったと思う。当時、トランクルームをやっていた会社は、財閥系倉庫会社がほとんど。高所得 者向けで、知名度もある会社。一方で、寺田倉庫は、一般での知名度は弱く、ノウハウもなかった。そのため、苦戦していた。その営業強化ということで、いろ いろなことにチャレンジした。

 ―今では“寺田倉庫のトランクルーム”といえば、ネームバリューがあるが。

 小泉 開始当初は、大変だった。電車の中吊り広告や、ポスターなど、自分でやっていて楽しい、面白いと思う広 告宣伝を考えていった。そこで、一般家庭で日常使っているものや、引越荷物といった荷物の保管サービスが生まれていった。先発のトランクルームがターゲッ トとしていた高所得者層以外のニーズを掘り起こせたのが成功のポイントだった。さらに、ビデオなどの記憶媒体や、書類保管のサービスも膨らんでいった。

 ―そんななか、標準トランクルームサービス約款の作成に携わった。

 小泉 弊社が始めた後、トランクルームがビジネスとなると見て取って、「雨後のたけのこ」のようにトランク ルーム事業を開始する企業が出てきた。そのため、一部ではあるが、品質の悪い企業もあり、一般消費者との間でトラブルとなるようなケースもあった。「商品 を預けたのに、なくなっていた」「引き取りに行ったら、壊れていた」「補償してもらえなかった」といったクレームが役所の方にいくようになった。トランク ルームビジネス自体が問題になりかねなかったので、約款を作る必要があった。当時の運輸省(現・国土交通省)から、日本倉庫協会に話があり、作成に携わら せてもらった。

 ―約款が運輸省から告知されたのが、昭和61年。

 小泉 まじめなサービスを提供している企業が残れるようにしないといけなかった。そのために、最低限必要なも のを約款で示した。さらに、今まで倉庫企業はBtoBビジネスを行ってきた。トランクルームはBtoCが中心となる。その違いも明記する必要があり、挙証 責任や保険などの情報を盛り込んだ。作成したのは当時の運輸省だが、トランクルームを行う倉庫企業として、必要なものであり、真剣に意見を述べた。

 ―その後、認定トランクルーム制度もできあがった。

 小泉 標準トランクルームサービス約款の告示から遅れること5年、認定トランクルーム制度ができあがった(平 成3年)。認定トランクルームは、標準トランクルームサービス約款に基づく企業が名乗ることができる。誰でも“トランクルーム”と名乗れたために、問題に なっていたのが、やっと解消できた。これで、トランクルームを「認定トランクルーム」「営業倉庫の標準寄託約款に基づくトランクルーム」「不動産賃貸のレ ンタル収納スペース」「野積みコンテナ」の4つのカテゴリーに分けることができるようになった。

 ―平成19年の改訂にも関係した。

 小泉 いろいろと要望を言ったが、1つのみの変更となった。不払いのお客の荷物を3ヶ月経てば、処分できるようになった。今まで1年必要で、効率的な運営に支障をきたしていた。土地用途の問題なども解決したかったが、できなかった。

 ―例えば。

 小泉 標準トランクルームサービス約款は、倉庫企業に適用される。その中で、トランクルームをやろうとする と、どうしても倉庫の用途や、建物のスペックが関係してくる。一方、レンタル収納スペースは、不動産賃貸なので、住宅街でもできる。この差を埋めたかった が実現できなかった。

 ―最近のトランクルーム市場をどのように見ているか。

 小泉 住宅街でもできる「レンタル収納スペース」の方が、元気
がいい。24時間利用、無人化といったように、うまくサービスを提供している。倉庫会社のトランクルームだと、“倉庫“の制約がでてしまう。土地の用途や 建物のスペックなどだ。そのため、住宅街で行うことが難しい。また、倉庫会社は“BtoCのビジネスは大変”という考えがまだ強い。

 ―アメリカの市場規模から考えると日本はまだまだ伸びるという考えもあるが。

 小泉 寺田倉庫で始めた頃は、高所得者層から一般という新しいニーズを掘り起こせた。また、トランクルームと いったサービスも少なく、ちょっと遠くても使ってもらえたので、市街地から少し離れた倉庫地域にある倉庫でもトランクルームがビジネスとして成り立った。 しかし、現在では、レンタル収納スペースが住宅街にあるため、より家から近くにあるトランクルームに流れてしまう。海外転勤などによる家財の保管も景気の 影響を受け、減ってきている。空いた倉庫があるから、トランクルームに変えようという単純な考えでは、うまくいかないだろう。周辺の世帯数や、家賃などを 調べて、賃料設定をしていかないといけない。物流を生かして、引き取りサービスといった、不動産でやっている無人化とは逆のサービスを打ち出すというのも 手だろう。ニーズと差別化要因をはっきりとさせることが重要だ。


国際物流総合展2021