物流不動産ニュース

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物流不動産の歴史-1 

物流不動産ビジネスの現状と今後
鈴木 邦成

はじめに

 「物流不動産ビジネス」ということばが誕生し、物流業界、不動産業界、金融業界など、多方面からの注目を集めている。物流不動産ビジネスの定義からこれまでの経緯、さらには今後の展開について解説する。

物流不動産ビジネス誕生の背景

 日本では倉庫業(営業倉庫業)は厳しい規則に守られていた。倉庫業者の免許を取得することは容易ではなかった。港湾や地域的な業務規則、港湾荷役や労働者の権利保全などの特殊権益とさまざまな規則が存在していた。
 そのため新規参入は難しかった。倉庫業会は安定した業界と言われるがその反面、新しいビジネスモデルなどの出にくい環境にもあった。
 しかし各種の制度改革により規則緩和が進むと状況は大きく変わってきた。
 厳格に区別されていた倉庫業と不動産業の垣根があいまいになってきている。
 例えば、従来は保管のスペースを提供する「倉庫賃貸業」は不動産産業と位置づけられていた。管轄も運輸省ではなく、建設省であり「営業倉庫業」とは一線を画していた。けれども、運輸省と建設省が一体化され、両者の管轄が国土交通省になったことなどから両者を融合しようという流れが出てきているのである。倉庫業法における営業行為なのか不動産法によるスペース貸しなのか、はっきりと区別できないケースが目につき始めたわけである。
 そしてその流れが、物流事業者、不動産事業者などが中心となって、倉庫、物流センターなどの物流施設のトータルマネジメントの商業化、すなわち「物流不動産ビジネス」に発展したのである。
 物流不動産ビジネスとは「規制緩和の流れの中で営業倉庫業者と賃貸倉庫業者の垣根をあるときは超えながら物流施設の情報の公開・共有化を推進するビジネス」である。
 規制緩和の流れの中で物流不動産ビジネス市場が拡大してきた理由としては主として次のことが挙げられる。

①3PLで物流施設のノンアセット化の加速

 物流業界におけるサードパーティロジスティクス(3PL)の発達が物流施設のあり方を大きく変えた。3PLでは倉庫や物流センターを持たないノンアセット型の物流サービスが必要となるからである。
 そこから例えば、物流施設を一括して借りて、それを区割りして資料をとりサプリース(転貸)を行うというビジネスモデルが注目を集めている。だが当然のことながらこれは伝統的な倉庫会社にとっては大きな脅威となってきている。

②外資系不動産会社による物流ファンド戦略

外資系不動産企業を中心に物流施設の不動産ファンドが有力ビジネスとして認められてきたことも物流業界、倉庫業界に大きな衝撃を与えることとなった。物流施設への投資に特化した不動産ファンドを「物流ファンド」ともいう。
 外資系不動産企業は多額の資金を倉庫取得に投資、賃貸してその賃料収益を得るという戦略を大々的に展開している。
倉庫、物流センターなどの物流施設は一般的に立地の関係から土地価格が安く、しかも建設費や管理費もかからないことから高い収益性が保証されている。ユーザー企業との関係も長期にわたり、七年から十五年ほど続くケースが多い。「定期借家契約」を行うことで収益性の高い事業に取り組むことが可能になる。
 米国などの海外の不動産企業、3PL企業は物流ビジネスと不動産ビジネスを融合したかたちでの金融商品として物流ファンドに注目し、そのマーケットを大きくしてきた。
 そしていま、日本もその流れに巻き込まれようとしているわけである。

③中国物流との関係で進む物流施設の選別

 中国物流の発展や在庫削減の徹底から国内の倉庫需要は現象の一途をたどるのではないかという懸念が出てきている。
 しかし、実際には高度情報システムに適した最先端のフルフィルメントセンターなどのニーズはむしろ増えてきている。
 また、分散型の旧式倉庫から最先端の集約型の大型、あるいは超大型物流施設へのシフトは加速の方向にある。
 さらにいえば、消費地に近く、配送コストが下げられる新しい立地での倉庫、物流施設は予約でいっぱいということにもなっている。
 すなわち物流施設の選別が進んできたのである。テナント需要とのマッチングが不十分なために生じる供給過剰の問題も浮上してきている。
 こうした背景から誕生した物流不動産には①インターネットによる空き倉庫情報の公開ビジネス、②物流事業者の支店からの物流施設管理、コンサル、③物流ファンド、④戦略的保管ビジネスとしてのトランクルーム、といったメニューが挙げられる。以下そのメニュー表にそって物流不動産ビジネスを詳解していくことにする。