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東京オリンピックは不動産への死刑宣告・・・ - 116 

不動産経営のコンサルタントと話をした時のこと。主なテーマは東京オリンピックが日本の不動産へ及ぼす影響について、だったのだが、実際の話題はオリンピック後も日本の不動産が生き残れるか否かという点に終始した。結論からいうと、「東京オリンピックは日本の不動産に対する“死刑宣告”に等しい」という見解の一致をみた。

日本における不動産投資は、まず極端な資金流入が短期間に行われ、その後の数年間を回収に充てるというサイクルが繰り返されてきた。取引価格でいえば、拡大期=価格上昇と停滞期=価格下落が反復される。その値動きを見極め、適当な時期を見計らって売り抜けるという不動産投資の基本ともいえる動きが通用するのも、東京オリンピックまでの数年間で最後になるのではないかというのだ。実際、不動産ブローカーに話を聞いてみると、その多くがおおむね2018年ごろまでに着地できる見通しがついている案件にしか手を出さないという。彼らのなかには、「2020年まで物件を抱えていてはババを引いてしまう」という恐怖心があるのである。

“死刑宣告”であると結論した理由を端的にいえば、オリンピック後のビジョンが全く不透明であり、希望が見出せないからである。日本の経済を東京オリンピック抜きに考えてみれば、膨らむ財政赤字にGDP、GNPの伸び率に対する不安、さらにそれら諸課題の根本的要因でもある少子高齢化と、将来を暗くさせるような要素ばかりが目についてしまう。今日、確かに景気は悪くない。しかし好調そうに見えてもその奥底には「いま稼いでおかなければ次はない」という焦燥感が淀んでいるのではないだろうか。

これは何も、不動産業界だけに限った話ではない。倉庫や物流施設も“不動産”である以上、その影響は必ずおよぶ。しかし心配しすぎることはない。実際の裁判に上訴があるように、この死刑宣告も絶対ではないのだ。判決を覆すには新たな証拠の提出が効果的であるように、ビジネスにおいて生き残るためには新たなスキームの構築が有効だ。そしてそれは不動産業のみならず、倉庫業・物流業においても同じことがいえるのである。“執行”まであと5年。無駄にできる日は1日もない。

(久保純一)2015.08.20