物流不動産ニュース

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“重視”されても“リスペクト”されない物流現場 - 117 

「現場重視」という言葉をよく耳にする。目にもする。倉庫内業務やトラックドライバーなどをはじめとする“現場”は物流業における最前線であり、モノを実質的に動かす実働部隊である。いうまでもないが、どんなに優れた物流システムでもここが機能しなくては成り立たない大切な段階であり、品質にも直接影響する分野である。そういう意味で「重視」されているのも当然といえる。

筆者は幸せなことに、多くの物流施設や倉庫を見せてもらえる立場にある。普通なら見せてもらえないような奥の奥まで見せてもらえる。いずれも取材先の倉庫オーナーや物流業者さんたちの好意の賜物であり、ありがたいことと感じている。そういうオーナーや物流業者の皆さんも一様に「物流現場の重要性」を口にされる。それでも筆者が現場の面白さや、施設に刻まれた長年の業務の痕跡の味わい深さ、建物や備品、什器の配置などに見られる機能美に言及すると、きょとんとする人が少なくない。

前述のような光景は物流に従事する人々には見慣れたものであり、珍しくもなんともないのはわかる。しかし現場をいまだに「汚い場所」として見る傾向があるのは、そこを重視しているという言葉との大きな矛盾を感じてしまう。段ボールが積まれた中をベテランが操るフォークリフトが通り過ぎる。そんな日常的な光景を写した写真の掲載を断られたこともある。写真の良し悪しはともかくとして、「古い倉庫だから綺麗ではない」「当たり前の光景すぎて未来を感じさせない」というのである。そういう反応に接すると、「重視している」というのも単に業務を滞らせたくないためだけに言っているように感じてしまい、急に空々しい言葉に思えてしまう。

現場が日々の業務を当たり前にこなし、その当たり前の日常を繰り返しているからこそ物流は成り立つ。にもかかわらず、その日常の光景を否定するというのはどういうことなのだろうか。いったい何を重視しているのだろうか。自身を否定するものに未来はない。だからこそ、物流の現場に潜むその美しさや面白さに気が付いて欲しいのだ。

物流に従事する皆さん。まずは声を大にして言いましょう。現場は面白く、そして美しいのだと。

(久保純一)2015.09.05