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代々木駅前に望郷のビルを。 

JR・代々木駅前に不思議なオーラを放つ空間がある。1974~1975年に放映されたドラマ「傷だらけの天使」の主人公(ショーケン、水谷豊)が屋上のペントハウスに住みついていた代々木会館だ。

ファッション、音楽、カルチャー、全てが最先端を走っていた。その舞台となるエンジェルビルがこの8月から解体作業に入った。当時から古さを感じていたが、老朽化が進んでいった。朽ち果てていくエンジェルビルを大人になってからも定期的に行脚していた。

私はリアルタイムでドラマを見ていた世代ではないが、影響を受けたひとり。それもかなりの重症だと自負している。ビルを見上げているだけでよかった。片思いの女の子を遠くから眺めるように。

しかし、問題なのは同じ考えのおっさんが多いこと。皆、無言で屋上を眺めながら、ノスタルジックな表情に包まれている。彼らの頭の中では、井上堯之の「ひとり」がシャウトしている。仲間だと思われたくないが、私も外部から変態チックに見られていたはずだ。

都内では築50年を過ぎたビルの建て替えラッシュが進んでいるという。エンジェルビルは、ドラマ最終回に取り壊しをされていた。身体を張って阻止しようとしたショーケンが亡くなったのは今年の3月。解体工事が終わる来年1月末まで、代々木に通うことになるだろう。

ロジスティクス・トレンド 水上 健