物流不動産ニュース

物流、物流不動産、倉庫を網羅した
最新ニュース・情報を発信しています。

  • メール会員情報変更
  • メールマガジンバックナンバー
  • ニュースメール配信登録

延 嘉隆の物流砲弾<13>利益相反が横行するモラルなき“物流コンサル”の素行 

 
前回、“物流コンサル”の“シノギ”に言及したので、今回は、物流コンサルの悪行に触れたい。“商い”たるもの、お金を払う側と貰う側の双方が納得すれば成立するものだが、“物流コンサル”の素行で眉をひそめたくなることは多い。

筆者が最も「いかがなものか?」と怪訝に思うことは、商取引における受発注に関連し、発注側から(委託業者・ソリューション選定支援等の名目で)何かしらの報酬を得ているにも関わらず、物流業務やソリューションなどの当該商取引と紐ついて、受注側(物流会社やソリューションベンダー)からも、紹介料などのバックマージンを得る行為だ。

一見、「どこが変なの?」と感じるぐらい常態化しているのかもしれないが、筆者のモラル感では、受発注や売買などの商取引において、発注側・受注側双方から報酬を得ることは利益相反行為に該当し、慇懃自重すべき行為である。もっとも、他業種において、例えば、不動産取引のように業法(宅地建物取引業法)で仲介手数料(%)が決まっている場合、あるいは、M&A取引のように、概ね、M&A市場で有効に通用するレーマン方式のように、双方から報酬を得るスキームは存在している。

しかし、そのような一般的な基準が存在しない商取引においては、厳に、慎むのが礼儀ではないだろうか。何より、当該取引で揉めた場合、受or発注側のどちらの側に立つのか、どちらの利害を守るのか、スタンスが不明確となる。また、双方からの疑念や誤解を生じさせやすい。逆説的な言い方をすれば、ここら辺に節操の無い“物流コンサル”は多いが、そう長くは続かないのが常。

明確なルールは存在しないが、取引に何かしらの関与(助言や選定など)をする場合、第三者のコンサルとて、その双方に、金額までは言わなくとも、どちらからどのような意味合いの報酬を得ているのかという点を、最低限、オープンにすべきではないかと考える。

 

“俺”に固執した失敗が多くないか?


利益相反事案とともに筆者が糺すべきだと考える“物流コンサル”の悪行が“俺”への固執だ。これは、“物流コンサル”が「顧問」と称されるパターンに多い。経営者あるいは経営幹部の相談役的な意味合いの顧問。その任を与えられる以上、確かに、対価を払うに足る知見を有しているのだろう。

しかし、物流大陸は果てしなく広い。相応に事例数の自負がある筆者とて、まだまだ、知らないことは多い。もとより、“物流コンサル”とは、所詮、何かしらの物流業務等に詳しいだけの人であって、総じて、経営を語る立場の人では無い。“物流コンサル”を依頼する側の問題でもあるが、どのようなレイヤーのどのような領域の専門家なのかをキチンと把握し、総花的に何でも相談することは控えるべきだ。

と書いてもピンとこないかもしれないが、倉庫選定、システム選定、人材会社選定、物流機器選定など、ありとあらゆる支払いが絡む事案で、“物流コンサル”に判断を丸投げしているケースはないだろうか?

そのような場合、(人となりにもよるのだが)馴染みの事業者やベンダーに偏って振り、“阿吽”の呼吸でのバックマージンが発生していることは往々にある。無論、言わなければバレない類のことであるが、何かを選定する際には、「どちらの側に立って“解”を求めるのか」スタンスを明確にしないと、「“解”そのものが導き出せない」筈だ。また、前項と同様に、受・発注側双方が揉めることもある。

というより、“地獄耳”の筆者の印象では、寧ろ、委託・導入後に揉めるケースの大半はそのような事案なのではないかさえ思う。なぜならば、そのような事案で、(失敗の原因として)「なぜ、そこを選んだのか?」という点を掘り下げていけば、だいたい、「コンサルの○○先生が・・・」みたいな話が出てくるものだ。何も、“忖度”は永田町だけの話ではない。

筆者は、人生キレイに生きてきたとは言い難いが、こと物流に関係する選定の場面では、「健全な競争原則」の担保は不可欠だと考え、李下に冠を正さずという点をかなり意識する。無論、受注側から報酬をもらって案件を獲りに行く場合は、そうでは無い。依頼人のエージェントとして、仕事を獲ることに最善を尽くすのが任務となる。

話が散乱したが、“物流コンサル”の側は、こと、何かしらの受発注をともない事業者やベンダーを“選定”する際、自分が出来ること・出来ないこと、得意なこと・不得手なことをキチンとわきまえ、時に、慇懃自重することも必要だ。個人的には、いわば客観性・中立性みたいなモノが、自身の“物流コンサル”としての賞味期限を伸ばす“肝”ではないかとさえ思う。

 

蛇足ながら・・・筆者に問い合わせが多い理由


以下は、蛇足として捉えて頂きたいが、業界紙やネットで露出が極端に少ない筆者であるが、意外と、仕事の問い合わせは多い。その最たる理由は、「物流コンサル・コンシェルジュ」というサービスを掲げている点にある。より正確な表現をすれば、「サービス」といっても、基本的に、特に、ドキュメント作成やデータ分析など時間を要する作業が入らない範囲内においては、おカネを取らずに、相談事(課題点)を聞き、課題解決への道筋をつけ、しかるべき専門家に委ねるお手伝いをしている。

これは物流業界に限らないのだが、上手くいかない課題解決の多くは、「実は、相談する側も、キチンと課題を把握できていない、整理出来ていない」といった点にある。10年ほど前になるが、「月刊ロジスティクス・ビジネス」のコンサル特集のなかに「失敗する理由の多くは使う側にある」との記事もあった。

実際、相談者とのファーストコンタクトの際、依頼者は、社内における自分の目線で考えがち(*悪くいえば視野狭窄)なので、フォーカスがズレてるな・・・と思うこと、あるいは、(管掌取締役や経営トップなどの)上席のOK取れたら、もっと、こうした方がいいのになど思うことの方が多い。

寧ろ、社内全体の視点、全体最適化視点では、的を射た相談の方が少ない。また、ほぼ100%、課題解決に向けての前提条件・制約条件やゴールがキチンと定義出来てらず、成否の可否判断基準もない。それでは、何をしても良いのか悪いのか解らない。おそらく、ここが解らない人は、永遠に、目先を小手先でイジり続ける無限ループ、社内向けの“やってる感”の演出に勤しむことになる。

ゆえに、課題解決に向けての制約条件やスコープ、そして段取りが定まっていない。それだと、誰が手掛ける(相談を受ける)にしても、上手くいかないし、特に、(凝り固まった成功体験を押し付ける傾向がある)エンジニア出身者や、どこどこの部長経験者のようなリタイヤ&年金の足し系の“物流コンサル”は、話を聞く技術がそもそも無い。何より、自身が経験した目線以上の視野や思考性が無い。

だから、単純に、諸事を整理してあげるだけで、より課題が明確になる。改善・改革の第一歩が、的確な事実認識にあるとすれば、そういう話があまりに多いことに眉をひそめたくもなる。

どんなコンサルが偉い&凄いのか?


2回にわたり、シンラツな言葉を述べてきたが、筆者は、何も、高尚なことを説くコンサルが偉いとは思っていない。寧ろ、高尚なことを説いているコンサルの寄稿などを見ながら、「あっ!?コイツ、実務したことないな・・・」などと感じることの方が多い。コンサルで議論すると、当事者は感情の議論になり収集がつかなくなるので、数学(算数)の先生に例えると解り易い。

東大を受ける人に数学を教える先生と、小学生に算数の楽しさを伝えられる先生とどっちが偉い&凄いか?

おそらく、この命題に答えは無い。東大を受ける人に数学を教える先生はそれそれで、小学生に算数の楽しさ大事さを教えられる先生もそれはそれで、いずれも素晴らしい先生なのだ。つまりは、数学(算数)を学ぶ人それぞれが、その目的に応じて、相性がいい先生を選ぶことこそが肝要ではないか・・・と、心底、思う。

 

最後に・・・


コンサルについて長々と書いたクセに、筆者は名刺に“コンサル”という文字を一切用いていない。単に、「代表取締役」という肩書きしか書いていない。これは、10年前、初めて物流業界を垣間見たとき、「この業界のコンサルって何?」という疑問を激しく抱き、この業界でコンサルと自称している人たちとは違うな・・・、一緒くたにされたくないな・・・との思いから、敢えて、“コンサル”と名乗らないようにしてきた。

それゆえ、初対面の方から、「どのようなお仕事を・・・」と聞かれる機会も多いが、仲良くしたくないな・・・と思う人には“ブローカー”と答え、そうで無い人には“コンシェルジュみたいなもの”と答えている。また、付き合いたくも無い(*距離を取りたい)と感じた人には“イベントプロデューサー”とウソをつくようにしている。ただ、あまりに、イベントプロデューサーと名乗ってきたせいか、些か、胡散臭さが増してしまったので、最近は、“マーケットメーカー”というようになった。よく解らない&国内ではあまり使われない言葉ではあるが、個人的には、最も、腹に落ちている単語だ。

最後に、聞けば、イーソーコにも、多くの相談が寄せられるという。相談事の大半は、有償で報酬が発生するコンサルに相談するまででは無い・・・といったことも多い。この連載のご縁もあるので、当社がコンサル受託しないことを前提に、物流業界のコンシェルジュ的な捌きが出来ればお役に立てるのではないかと思い、再度、以下のURLを記載して、シメの言葉としたい。
物流コンサル・コンシェルジュサービス

●延嘉隆氏プロフィール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
株式会社ロジラテジー代表取締役。
物流企業経営の視点で、財務戦略(事業承継・M&A・企業再生)・マーケティング戦略を融合し、物流企業の価値を上げる物流コンサルティングファームとして評価が高い。
物流企業を中心に、事業承継・相続、物流子会社の売却など、“ロジスティクス”、“卸”、“小売”などの財務課題で、卓越した経験を有する一方で、物流現場に作業員として入り、作業スタッフとの対話に勤しむ一面も。延氏の詳しいプロフィールはコチラ。

*本連載に関するお断り