物流不動産ニュース

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不動産開発を規制すべき、という話 - 125 

適切な管理が行われていない空き家に対し、修繕の命令や取り壊しの強制執行を可能とする「空き家対策特別措置法(空き家特措法)」が施行されてから約半年が経過した。現在、全国にある空き家は820万戸以上。全住宅の13.5%が空き家という計算で、この数字は年々上昇し続けている。

放置された空き家は景観を損なうだけでなく、防犯上や衛生上も好ましいものではない。多くの空き家が存在する地域は荒れた街という印象を与え、近隣の住環境を低下させるもとともなる。空き家特措法はこうした状況を是正すべく制定されたものだが、この法律だけで空き家問題が解決できるわけではない。空き家を活用し、なおかつこれ以上空き家を増やさないための取り組みが必要なのである。

なぜこんな話題を持ち出したかといえば、この問題はビルにも、商店にも、そして倉庫にも共通したものだからである。多くの中小ビルが空きフロアをかかえ、商店街はシャッター通りと化し、荷物のない倉庫が空間を持て余している。日本の人口が減少し続けている限り、この問題を根本的に解決するのは無理なのかもしれない。古びた入居者募集の看板を目にするたび、そんな不安に駆られてしまう。

先日、ある不動産デベロッパーの開発担当者と会ったときのこと。この問題の解決策について興味深い話を聞いた。日本のデベロッパーはその収益構造上、建物を建て続けなければ儲けがでない仕組みになっているのだが、これはデベロッパー同士の間に自由競争が認められている以上は是正のしようがない。そこで建物の容積率や建ぺい率に、法律上の制限をつけられないものだろうか、というのである。現在、特に大規模な開発に対しては容積率を緩和するというのが行政の姿勢である。これに一定の制限を設け、現状に即した開発を行っていくよう働きかけなければ、いずれはマーケットとして成立しなくなる。現在の状況は、長期的に見れば自分で自分の首を絞めているようなものなのだという。実は少し前にもあるゼネコンから同じような話を聞いていたので、その意見の符合に驚きつつ現状認識を改めざるを得なかった。いずれも、2020年の東京オリンピックが終わるまでには規制強化の方向に持っていければ、という。現在の不動産市場に対する危機感のあらわれといっていいだろう。

人口減少が深刻なドイツでは、新規開発は原則として許可制で、その計画についても行政がコントロールする仕組みが出来上がっている。日本とドイツは文化的にも経済的にもその背景が異なるため、もちろんこれをそのまま導入するわけにはいかない。今日の日本の繁栄は、デベロッパーやゼネコンがその一端を担ってきたという事実を否定する気もない。それでも、自由競争・市場の要請という伝家の宝刀を振りかざして無秩序な開発を続け、結果として空き家を増やしてしまうよりはましなのではないかと、ふと思ってしまうのである。

(久保純一)2015.11.05