物流不動産ニュース

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初荷の心意気 - 133 

正月明けの仕事始めの風物詩だった「初荷」を、昨今はあまり目にしなくなった。初荷とは新年に、倉庫や工場から初めて出荷される荷を運ぶトラックを飾り、にぎにぎしく送りだすこと。荷物そのものを飾ったり届け先に粗品を渡したり、あるいは神主を呼んで1年の交通安全と商売繁盛を祈願する初荷式を行うこともあった。

初荷が行われなくなった理由はさまざまだろうが、製造業や卸売業ではコスト削減や効率化、運送業では、余計なことはしないほうがトラブルにならないというのが主な理由だろうか。「初荷」と書かれたのぼりを揚げ意気揚々と走りまわったトラックも、今では道交法に抵触する可能性があるとされている。さらにいえば、今日では倉庫や物流は365日24時間稼働が当たり前。物流の円滑化を考えれば、初荷などは無駄以外のなにものでもないのだろう。

しかし初荷は、景気づけや届け先への新年のあいさつ、荷主に対する日頃への感謝の気持ちをあらわすことが本来の意味だ。今年も荷物を届けることができる、その感謝の意と、今年も無事に荷物を届けようという決意のあらわれでもあるのだ。時代の趨勢に逆らう気はないのだが季節感を醸す数少ない行事――シーズンによる物流波動は別として――であった初荷がなくなっては、物流業には文字通り盆も正月もなくなってしまう気がする。

とはいえ初荷と書かれたラベルや垂れ幕、のぼりがなくなっても、顧客への感謝や1年の安全を新年に誓う、その心意気が変わることはない。誰かの心のなかで、今年も初荷は運ばれていくのだ。

(久保純一)2016.01.05