物流不動産ニュース

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あんなことやこんなこと on 屋上 

屋上活用なんてことが言われだしてからどのくらい経つのだろう。屋上菜園や屋上緑化に太陽光発電、変わったところではヘリポートに駐車場、最近では自由に出入りできる屋上公園なども話題になった。いずれも既存の概念にとらわれない新しい発想で屋上を有効利用しようというこころみだが、屋上を活用しようという発想自体はとくに新しいものではない。例えばどこのデパートにもあった屋上遊園地。これなどは屋上という空きスペースに価値を付加して魅力ある空間に変えた好例だが、そこまでいかなくとも、屋上はもっと身近な場所だったはずなのだ。

例えば昼休みに屋上でバレーボール。仕事の合間に屋上でちょっと一服。天気のいい日は屋上でお弁当を。なんていう光景は、昭和の半ばごろまで当たり前に見られたものだ。屋上で朝礼をしたあと東京の空に向かって高らかに社歌を歌うなんて、当時は珍しくもない。なのになぜ人が屋上と疎遠になってしまったかといえば、大きな答えは二つ。ひとつめが安全面。もうひとつが設備面だ。

安全面というとわりと想像がつきやすい。屋上遊園地のような整備された場所はともかく一般のビルはそうはいかない。手すりやフェンスがあるとはいえ当時の安全意識は今日とはだいぶ異なるし、やはりオフィスの屋上に出入り自由というのはちょっと怖い。ましてやそこでバレーボールなど、今考えてもひやひやしてしまう。何かある前に出入りを禁止してしまおうという考えになるのも当然といえる。

もうひとつの設備面でいえば、ビルの空調設備や電気設備が大きく変わったことと大きく関係している。建物全体に空調を完備するために冷却塔が、増えた電力を制御するためにキュービクルが、というように設備が増えていき、そしてそれらの設置場所として屋上は格好だったのである。かくしてさまざまな設備が屋上を占領する時代が続くわけだが、そもそも各種の設備を屋上に設置すること自体が限られたスペースの有効活用策であるわけで、これも屋上活用のひとつといえなくもないのだが。

ところがビル用設備が進化し、以前ほど大きな設置スペースを必要としなくなってきたことで、屋上に再び「空き」がではじめた。セキュリティに対する考えも進み、入退館の管理やカメラでの監視も簡単になった。さらに賃貸市場が飽和化して他のビルとの差別化の必要性がでてきたことで、屋上をそのメソッドとしてとらえる意識も広がってきた。新しい施工技術も開発され、あらゆる用途への転用も以前より容易になった。ここにきて、屋上は以前にもまして大きな自由を手に入れつつあるのだ。

冒頭でも述べたとおり、屋上の利活用にもはや目新しさはない。多くのビルに屋上庭園があり、屋上をテラスとした一戸建て住宅も珍しくない。屋上の活用など、今さらどうこう言うべきものではないのだ。ところが、倉庫や物流施設ではどうだろう。そろそろソーラーパネル以外の活用策があってもいいと思うのだが、その点、建物を使い尽くすという意識においてまだ至らないのではないかという認識を抱かざるを得ない。別に大きな設備投資をする必要はない。従業員用のちょっとした休憩スペースを設けてもいいし、設備投資をまったくせずに撮影用にレンタルしたっていいいのだ。要はアイディアとニーズの読み取りなのだが、これは単なる屋上だけの問題ではない。いずれにしても、もはや建物に対する意識が屋上にあらわれているといって過言ではないのだ。屋上が建物の価値に与える影響がこれほど大きくなったことはかつてないのだから。

 

久保純一 2017.03.05