物流不動産ニュース

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倉庫のリハブ 

英和辞典で「rehab」を引くと、「再生」や「復帰」という他動詞のほか、名詞として「厚生施設」という訳がでている。なかでももっとも膾炙しているのは「リハビリテーション」だろう。日本語ではリハビリと略すが、英語圏ではリハブと略すらしい。要するに「もとの状態に戻す」という意味をもつ語で、さまざまな場面で使われている。

建築におけるリハブという概念も、新しいものではない。この分野では、建物の修復や再生、あるいは修復されて再生した建物を意味し、場合によってはリモデルやリノベーションを内包していることがある。比較的大規模な改修かつ、いったん使われなくなった建物を再び甦らせるような場合にリハブと呼ばれているようだ。

内包しているとはいえ、リノベーションやリモデルとは異なる概念もある。それは、リハブが「機能の復帰」を主目的としていること。住宅をふたたび住宅として、店舗をふたたび店舗として、オフィスをふたたびオフィスとして使えるように改修する。それこそがリハブの眼目なのである。

このリハブという考え方。不動産投資では、建物の再生・収益化プロセスを指す場合が多い。安く購入した廃屋を賃料が得られるレベルにまで修復し、収益物件化するのである。住宅として建てられた建物は住宅として使うのがもっとも理に適っており、店舗として建てられた建物は店舗として使うのが最適だ。リノベーションに伴う建物の用途変更や用途追加は変化した不動産ニーズに合わせた結果に過ぎず、リハブできなかったがゆえの苦肉の策という側面も少なくない。再生可能か否かを見極める目はもちろん必要だが、不動産投資におけるリハブは、コストを抑えながらリターンを得る妙手といっていい。

もちろん倉庫においてもリハブは有効にはたらく。床荷重が高く大空間の倉庫は活用策の拡がりを感じさせ、用途変更を前提とした施策を試してみたくなる。が、倉庫は倉庫として使うために建てられたもの。リノベーション以外の活かし方は本当にないのだろうか。物流ニーズが変わったというのであれば、ニーズに合わせた倉庫に改修するという考え方があってもいい。建物活用といえば用途変更、改装といえばリノベーションという考え方にも、リハブが必要かもしれない。

 

久保純一 2019.9.5