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延 嘉隆の物流砲弾<14>ロボット導入で物流現場はどう変わる!? 

物流業界の“未来”を語る時、テクノロジーの面では「AI」や「ロボット」、課題の面では「人材難」が必ずテーマとなる。物流業界最大の繁忙期の師走は、本質的には表裏一体であるこの点に目を向けてみたい。但し、本文は、個別のテーマを深堀りして解説することを目的としていないため、そのような動機でご覧になられている方は、本文をご覧にならずに、google先生と相談し、しかるべき、文章をご一読頂きたい

物流現場から人がいなくなる日


物流業界ニュースで、毎週、何かしら目にする「物流とロボット」に関する記事。“ミゾユー”の人材難の折、あたかも、そう遠くない将来、物流現場から人がいなくなる・・・と感じてしまいそうになる勢いだ。

しかし、それらの記事の大半は、ロボットメーカーの大本営発表か、その導入事例の類だ。とはいえ、久方ぶりに、活況を呈し始め初めている物流関連ソリューションであることは事実だ。筆者は、当事者との付き合いがないため、その真意を窺い知る立場にはないが、「物流施設のロボティクス導入のためのファンド設立」という記事には注目した。

PAL/物流施設のロボティクス導入促進で、ファンド設立(lnews 2017.10.30)

ここで今一度、ロボットについて冷静に整理をしたい。

筆者の見立てを示せば、物流現場のロボット化の波や、各種機器へのAI活用は間違いなく進む。しかしながら、ニュース記事を見る限り、今のところ、大手企業の物流現場やECの物流現場、あるいは、当該ビジネスにおいて物流機能が重要な役割を果たす業態の物流現場に限られている。

つまり、ピラミッドのテッペン部分で導入が進んでおり、この裾野がどれぐらい広がるのか? というのが、耳目を集めるところではないだろうか。シンクタンク各社も、ロボット市場の拡大を見込んでいるが、導入には、安くはない資金が必要となる以上、最終的には、国の補助や助成などの制度設計が大きく影響を与える。筆者は、その動きを注意深く見守っている。

年始、ウェアラブル展と同時開催されていたロボティクス展を興味深く見た。というのも、展示されていたロボットは、必ずしも、物流現場用ではなかったが、動作性能やハンドリングなど、筆者の想像を大きく超えていたからだ。産業ロボットのパイオニア「安川電機」に至っては、そのデザイン性まで洗練されており、ロボットの持つポテンシャルを痛感させられた。そこにAIが加わると、たいがいのことは技術的にクリアしていくことになる・・・。引き続き、注意深く、その動向を見守っていきたい。

使う人を選ばないソリューションへ


あまり指摘している人を見たことはないが、漏れ伝わるロボットの“使い心地”に着目すれば、ロボットの導入が、従来のソリューションと比べて異彩を放つのは、ロボットを導入した現場で働く人の定着率に影響を与えないところではないか。

つまり、ことロボットに関しては、他のソリューション導入で散見された、「最先端なテクノロジーを入れて、人が辞めた(定着率が下がった)」みたいな話をあまり耳にしないのだ。もっとも、先行して導入されている作業プロセスゆえ・・・、至極、ロボット導入の目的が理にかなっているという背景もあろう。

ロボットは安いものではない・・・。今でも、マテハン機器がそうであるように、その裾野が「荷主~大手事業者~(比較的体力のある)中堅・中小事業者」まで・・・であるように、多くを占める中小零細事業者の物流現場まで広がるかどうかは未知数だ。

さりとて、ロボットに限らず、モノの値段というものは、市場が拡大すればするほど低減していく。そして、二次流通市場(中古市場)が、浸透の下支えをしていく。今後、加速度的に“人不足”が進んだ暁に、どうなるのかは誰も解らないが、個人的には、新しいハイスペックなソリューションが、資金的余裕がある物流現場だけではなく、遍く物流現場で導入され、3K現場たる物流現場に少しでも笑顔と安らぎを与えて欲しいと切に願うばかりだ。

余談ながら、時に、貨幣価値が異なる東南アジアの物流現場を廻る者として、我が国の卓越した物流関連ソリューションに関わる人たちが、嘗てかつて、故松下幸之助翁が洗濯機を作り、全国の主婦から、日々の“洗濯”の苦労を取り除き、笑顔と安らぎを与えたように、国家も、人種も、宗教も、貧富の差も関係なく、誰しもが使える道具に昇華させることで、世界の物流現場の光景を変える!という、高い志で挑んで頂きたいと心よりエールを送りたい。

そして、「人を便利にするための道具とは、その道具を手にする人を選ばないモノでなければならない」という私の思想に共鳴して頂ける各種ソリューションベンダーの方がいらっしゃれば、惜しみなく協力をさせて頂くので、遠慮なく、お申し出て頂きたい。筆者は、弛みなきチャレンジこそが、我が国が誇るべきロジスティクスのプレゼンスを世界に示すことになり、国際社会に貢献することに繋がると考えている。

本文は、筆者らしくない駄文となり、一部の連載マニアの方の期待を裏切ったかもしれない。率直に、その点は、申し訳なく思う。まぁ~、誰しも、そういう時もあると、笑い飛ばして頂ければ幸いである。

●延嘉隆氏プロフィール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
株式会社ロジラテジー代表取締役。
物流企業経営の視点で、財務戦略(事業承継・M&A・企業再生)・マーケティング戦略を融合し、物流企業の価値を上げる物流コンサルティングファームとして評価が高い。
物流企業を中心に、事業承継・相続、物流子会社の売却など、“ロジスティクス”、“卸”、“小売”などの財務課題で、卓越した経験を有する一方で、物流現場に作業員として入り、作業スタッフとの対話に勤しむ一面も。延氏の詳しいプロフィールはコチラ。

*本連載に関するお断り