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変わるアパレル業界 その1 − 第14回 大きく変わる業種・産業界

 糸、生地、カラー、デザイン、装飾ボタンなどの複合製品からなるアパレル商品は、時代の最先端を飾っていました。街の風景やショップの店頭を彩る 役割は、私たちに豊かさと躍動感を与えてくれるものでした。今でも銀座、新宿、渋谷の街並みはアパレルショップが創りだす雰囲気であふれています。
 世界の傾向も同じようで、21世紀に登場したファストアパレルというジャンルのお手頃価格でのブランドが世界中に展開されています。スペインのZARA、スウェーデンのH&M、アメリカのFOEVER21などが、百貨店のフロアを凌ぐ勢いです。
 日本でも山口出身のユニクロ、福島のNONEYS、ちょと郊外ではしまむら、西松屋などの勢いも感じられます。
 さて、伝統老舗の三陽商会、ワールド、オンワード、青山、AOKIなどの苦戦はどこに原因があるのでしょう。

 デザイナーや流行を創りだす技術の問題でしょうか。生産コスト、広告宣伝マーケティング、話題性、消費者趣向の変化なのでしょうか。

 ユニクロモデルと呼ばれたSPA生産方式は、中国生産による大量供給低価格で一時期を席巻しました。「程よい品質を圧倒的な低価格で」という、普 段着の売り方を変えたのでしたが、その勢いも変わりつつあります。今は、「新素材の機能性カジュアル」とでもいうような、素材メーカーとの研究開発による 新技術を売り物にしています。

 ファッション業界はよくも悪くも、イメージや夢、着る楽しさを売るわけですから、流行を創りだすためには試行錯誤の連続です。売れるか、売れ残るか、のビジネスは科学の入り込む余地はありませんでした。
 その点、ユニクロは製品科学を取り入れて成功したといえるでしょう。
では、販売科学はどうかというと、かつてイタリアBENETONが生み出したという後染め方式でのニット製品は、商品の連続補充が高速にできる画期的な生産科学、販売科学を極めたものでした。

 そして、前述のZARA,H&M、F21に徹底しているのは、高速生産、補充なしの売り切りという、割り切ったビジネスです。
 アパレルという複合製品の構造問題を解決するために、「作りすぎないで、売り切る」という方式に特化しています。

 たくさん売りたいけれども、失敗を避けるために深追いしない戦術は、基本といえば基本ですが、アパレル業界では失われていた視点です。
 たくさん売るには、単品大量自動補充というイージーゴーイングでしたが、その実、売れ残り、返品、バーゲンという複雑な手間をかけていました。

 作りすぎないで半月で売り切る、次はまた別の商品を投入する。という今までの1年を春夏/秋冬という2シーズン、4セグメントの商品構成から、1年間24セグメントの商品カレンダーに変更したのは、発想の視点と高速物流が成し得た科学だったのです。
(花房 陵 イーソーコ総合研究所主席コンサルタント)