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人財を送り出す - 第16回 物流不動産Bizの人材開発

労働の流動性が高まってきている。終身雇用、年功序列、企業内組合(労働者と雇用者の良好な関係)という日本原則は完全に崩壊している。新卒者の面談で30年勤務を前提とするものは皆無であり、面接担当者もまた生え抜きであるのも珍しい時代になった。育成して開発した人財はいつかは送り出さねばならない。世界企業ではGE、日本ではリクルート社、官公庁上級職員が優秀な人財の輩出で名を馳せている。せっかく育てたのに送り出すのは損得問題ではない。送り出される側の立場になれば、いつでも巣立てる環境にあることが、企業を選ぶ価値基準になる。

とにかく学ぶ姿勢で入社しても、いつしか価値の基準は自身に移り、「学ぶべき環境にあるか、巣立った時に良い経験を積めるか」が育成のさなかに見え隠れするものである。

 

若い人に夢を語れとは言うが、キャリアパスに明確なイメージを持てるかと問うのも難しいだろう。

育つために研鑽を強いる事があっても、育った後の人生まで及ぶことは出来ない。しかし、この職場環境、組織、価値観の中での経験が豊かなものであり、他では手に入れられないと感じるとき、それは「卒業」を実感できるはずだ。

送り出すこと、卒業を夢見ること、双方の覚悟がない限り真剣な育成や渇望による学びは起きるはずがない。

逆説的ではあるが、優れた人財を育て上げるには卒業させる覚悟が常に必要なのだ。

また、職務を通じて学ぶものは能力の発揮を期待され、実現化が見えてきたとき、卒業を意識しなくてはならない。自らが培ったものを別のマーケットや企業で更に磨きを掛けることが人生の醍醐味だ。人材輩出企業のリクルートは、創業者江副浩正の理念が深く根付き、今でも若手社員が憧れているという。それは、

 

<自ら機会を作り出し、機会によって自らを変えよ>

 

リクルート組織内部においても、チャンスを探し、作り出し、自らがチャンスを活かせ、というのだ。そして、社外にチャンスを見出すなら迷うことなく出てゆけと発破を掛けている。

 

育てる側の立場で見れば、放出はトレードのように思えるが、自らが育てた宝を社会に提供するというこれ以上の貢献はない、と覚悟することで経営や企業の価値が高まるものだ。

企業もまた機会を作り出し、その機会によって自己変革が行われることになるのだ。

送り出す巣立ちも卒業も終わりではなく、新たな価値の誕生なのである。

 

イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント 花房 陵