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株式会社アクティブソナー代表取締役 青木康時― 挑戦者に聞く 第7回 

【対談】ハイブランドに特化したリセールストア「RECLO」のフルフィルメント戦略

株式会社アクティブソナー代表取締役 青木康時
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株式会社イーソーコドットコム 代表取締役 早﨑幸太郎

 

日本最大級のハイブランドリセールストア RECLO(リクロ)を運営する
アクティブソナーは、オンラインリセール・プラットフォームを提供する
注目のベンチャー企業だ。
CHANEL、LOUIS VUITTON、HERMES、PRADAなど、
使われなくなったブランド品を流通市場へと還流させる。
ディノス・セシール、三越伊勢丹グループなどの大手企業とも協業を開始、
近年では海外向け販路も広げてきた。

そのアクティブソナーのフルフィルメントセンターが
東京・港区の五色橋ビルに移転したのがこの4月のこと。
倉庫面積は従来の約2.5倍となる1500m2まで拡大、物流分野に力を注ごうとしている。その狙いを青木康時社長から話を聞いた。

アクティブソナー 青木康時氏

フルフィルメントを再構築

早﨑 貴社が今回の移転に至った経緯は?

青木 弊社が提供する「RECLO」がサービスインからちょうど5年目を迎え、おかげさまで急激に物量が増えていくようになりました。三越伊勢丹さんの中古サービスOEM契約やセブン&アイさんなど、多数の企業から中古サービスのオファーをいただいています。

国内外の売上比率は直近で海外への流通が45%を超えました。日本で集めたブランド品が世界中、特に中国本土で大きな伸びを示しています。その流れでロジスティクス機能強化が大きな課題となりました。適切に、安全に、スピーディーに――、モノも回せるフルフィルメント機能をゼロベースからの再構築が課題となりました。とはいえ、山手線の内側にビックロケーションはそうありません。求める規模感は450坪程度で、Webチームと物流チーム双方の現場を突き合わせた結果、港区海岸の五色橋ビルにたどり着きました。

早﨑 イーソーコグループ本社もこの7月、五色橋ビルに移転しています。物流不動産ビジネスの流れが出始め、3000坪の倉庫をオペレーションする東運ウェアハウスに隣接するため、物流機能の一体化を加速させるためです。

近年、倉庫のあり方がかなり変わってきています。モノを保管するための蔵という位置付けから、倉庫に求める機能のニーズが高まりを見せてきました。そのなかで五色橋ビルに入居を決めていただいたポイントはどういうところですか。

五色橋ビル

青木 見た瞬間に使いやすそうなビルだと直感しました。私は働きやすさを大前提に考えていました。これまでオフィスで働いていた社員が、倉庫に移転した場合、ストレスを感じるかもしれません。特にアパレルは若い女性が多いのですが、倉庫色もありながらオフィスとしても使用でき、何より人が働きやすく、駅から歩いて通えるバランスが取れていました。実は4年間ぐらい、五色橋ビルの裏側の海岸沿いに住んでいたので、この辺はすごく詳しいんですよ。

早﨑 非常に有難いお話です。五色橋ビルの倉庫らしくない面を活かし、「ザ倉庫」の物流現場とオフィスを融合させるメリットを強調しながら営業展開しています。山手線エリアでも品川や浜松町はメジャーなスポットですが、田町は意外と盲点だったりします。開発という面では都内でも有数なエリアとして注目されている地域です。

青木 山手線エリアでありながら地価が安く、個人的には田町は港区最強説であると唱えています(笑)。

イーソーコドットコム 早﨑幸太郎

 

モノと人の動きと連動し、1フロアで完結

早﨑 青木社長のご経歴をお聞かせください。

青木 今回で4社目の起業となり、ベンチャーで携帯電話、ウォーターサーバーの販売などを経験しました。次に自分が会社を興すなら、ネットビジネスに携わってみたいという思いがあり、探し当てた結果、ブランド名をターゲットとした売買サービスにたどり着きました。メルカリが拡がりを見せていた頃です。CtoCのマーケットは伸展していましたが、その中でお客様が不安を抱くのは、専門性が高い商材や高額なブランド品だろうと。ただ、在庫を抱えるだけの資金がなかったため、在庫を持たない委託販売方式モデルにすれば、在庫金額は0でも無限に商品が持つことができます。

早﨑 そのビジネスモデルで、物流に注力するのはどのような理由があったのですか。

青木 物流をしっかりすることで、Webの会社には真似できない、Webとモノの双方を二つ同時にできる強みなると考えました。かなりの負荷がかかりますが。

早﨑 これまでの物流は、オフィスと現場が同居されていたのですか。

青木 オフィス内に物流スペースがあった程度です。今では入荷、保管、出荷はもちろん、商品撮影、採寸までの「ササゲ」も行い、川上から川下までワンストップの流れを構築できました。実は移転前も“ミニマムワンストップ”でやっていましたのですが、保管スペースが限られていたため、外部倉庫に在庫を分散した結果、物流が分断されてしまっていました。

早﨑 五色橋ビル移転後はうまく回っていますか。

青木 モノの流れが人の動きと連動して、1フロアで完結でき、マネジメントの管理もしやすく、余計な負荷がかからなくなりました。一番大きいのは情報の分断がなくなったことですね。

早﨑 現在はシェアの時代になろうとしています。貴社のビジネスモデルはテクノロジーの進化とともに、かなりの需要を見込むことができると思います。そこで盲点となるのが物流コストです。売り上げが上がるほど、物流コストのコントロールは難しくなります。物流面から期待や不安などはお持ちですか。

青木 弊社はWebサービスでありながらモノを扱うため、物流のポリシーは不可欠で社内に浸透させないといけません。Webチームのスピード感は早く、改善も頻繁に行われます。それと同じスピード感と頭の使い方で物流を回すには、適材適所でアウトソースしていかないといけない。今後さらに物量が増えて、扱う物量が倍になると人も倍になってしまいますから。物流は弊社ビジネスのキモとなる部分です。

早﨑 物流も不動産も業界は大きいため、イノベーションがなかなか進まないと言われています。物流、不動産ともに業界が持つ文化が大きく異なっています。お客様からすると倉庫立地は非常に重要となりますが、不動産の知識が欠かせません。不動産のスキルさえわかっていても物流の流れがわかっていないと、これもうまく回らない。だからしっかり融合させていくことが重要な課題だと考えています。

青木 AIが人の仕事を奪うというネガティブな感覚ではなく、人がやらなくていいことはやらないで楽をした方がいい。重いものをロボットに運んでもらえば腰を痛めなくて済みますから。こういう切り分けが進めばいいと思います。

早﨑 イーソーコグループはモノオクと資本提携を結びました。CtoCが基本となるビジネスですが、B(ビジネス)を意識しながら回さないと、物流がネックになる可能性があります。最先端テクノロジーとマーケットシェアをコントロールすれば、良い意味で新旧を一体化させていき、その結果お客様に価値を届けられると思います。

青木 その橋渡しをしてくれる企業が少ないと思います。

早﨑 海外物流でお困りはありますか。

青木 国によってローカライズが大きく異なり、難易度が非常に高い点です。関税も含め、突然のルール変更やシャットアウトされることも起きがちです。餅は餅屋じゃないですが、海外物流の実績のある会社と組むことで、我々も物流ノウハウを蓄積しながらサプライチェーンの効率化に結び付くと思います。

黒子に徹し担当者1人で回せるスキルを提供

早﨑 大手企業と組んでスムーズに回せるコツはありますか。

青木 大企業だからといって、人材が潤沢とは限りません。特定の部署単位ではリソースが足りない場合もあります。ベンチャーより予算が限られていることも多く、規律が厳しいことは過去のビジネスから理解していました。そこで大企業が食いつく提案要件は2つあります。汗はかかない、地位と名声を得られることです。BtoBの組み方も弊社が全部行い、黒子に徹しながら担当者の方1人で回せるスキルを提供しています。

早﨑 青木社長はこれまで、IPOに固執せず次の事業を立ち上げられています。

青木 特性があると思います。先発型投手なのか、クローザーなのか。私は何もない焼け野原から種を植え、芽が出ることの喜びを感じるタイプです。それが育って実がなる頃には、やらなきゃいけないことが山積しています。もちろん今回もIPO狙いで、やる以上は半端な覚悟ではできませんが、チームの戦略として、勝利への最善策を選びたいと思います。これまではプレイボールの掛け声とともに、先発を任され、6回裏まで2点で抑えてよ、みたいな役割が回ってきましたね。

早﨑 先発投手として対戦中、組織もできてくるじゃないですか。それなりに思いや愛着も出てくると思いますが、いががですかか。

青木 逆に未練を持つと、次への情熱がそそがれ、エネルギーが分散することもあります。適切な役割分担が必要ではないでしょうか。例えば1000億円企業まで成長したら、MBAホルダーのコンサルタントの外国人に社長を任せた方がベターかもしれません。役割とサイズによって適切なリソース配分もあると思います。これは個人の考え方ですが、早い球を投げられなくなった時、マウンドに立つのはやめたほうがいい。世代交代させないチームは勝ちに繋がるのか――、これを常に意識してやっておくべきだと思っています。

 

アジア最大のラグジュアリー・リセールカンパニーへ

早﨑 続いて人材強化面をお聞きします。新入社員の方は新卒・中途、どちらを採用されるのですか。

青木 ベンチャー企業はスピードが生命線を握るため、即戦力の中途採用ばかりです。この先、どこかのタイミングで新卒の色に染まってない新入社員が入ってくれば、文化を醸成できるかもしれません。

早﨑 発掘・育成について重要視されていることはありますか。

青木 弊社のビジネスは特殊です。誰も経験したことのない新たな事業ですので、入社のフェーズで過剰に盛り過ぎて、お花畑のイメージにしないように気をつけています。楽しいことばかりの会社と思われると、壁にぶつかったときの衝撃は大きく、その反動が後で取り返しがつかないことになりかねません。だから「こういう大変なところもありますよ」と具体的に話す一方で、「会社の長所はチャレンジできること」と明確に切り分けています。

会社は1つのチームです。打球が外野と内野の間にポロリと落ちそうな時は全員で声を挙げ、注意喚起しないといけません。自分がボールに届かない距離にいたとしても、球が落ちるタイミングや場所を共有できればエラーを防げることができるかもしれません。これはビジネスの中でも往々にしてあることです。

早﨑 声を出し合うにはお互いの環境を理解できていることが重要ではないかと思います。イーソーコグループでも人財育成を最大の成長戦略に挙げ、その一環でジョブローテーションを新入社員教育カリキュラムに盛り込んでいます。青木社長のお話のように、プレイヤー全員が野手の気持ちや立場を理解しながら、打球の方向を注視できる環境こそが勝利への道筋になるのではないでしょうか。

物流施設が所有から利用へという流れがあるなか、人財面では雇用から活用へという流れが見えてきました。そこでイーソーコグループでは、コンソーシアム化(共同事業体)を進め、各社で活躍できる人財「物流ユーティリティープレーヤー」育成が物流不動産ビジネスのコアになると考えています。

 

最後に、RECLOに関する今後の展望をお聞かせください。

青木 お客様のため、社会のための事業ですが、世の中にとってインパクトのある必要なサービスになりたい。国をまたぐグローバルサービスを構築して、アジア最大のラグジュアリー・リセールカンパニーになることが我々のビジョンです。欧州も視野に入れていますが、当面はASEANも含めたアジアで広めていきたい。

そのキーとなるのが、高級品トランザクションのCtoBtoCサービスです。その着地点に向かい、物流はどうあるべきか、ネットはどうあるべきかで、人はどう動くべきか――、ようやく発射台に立てたところですが、このスタイルを確立していきたいですね。

 

 

コーポレートサイト:株式会社アクティブソナー