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気宇株式会社 代表取締役 木原佑介 ― 挑戦者に聞く 第5回(前編) 

【対談】改革をけん引するのは“人の力”

気宇株式会社 代表取締役 木原佑介
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株式会社イーソーコドットコム 代表取締役 早﨑幸太郎

 

物流業界におけるITの普及度は、決して低くはない。荷物の追跡システムや倉庫内のロケーションシステムなどは他分野に先んじて導入されており、先進的という評価もある。しかし導入されたシステムが最適であり、かつ最大限活用されているかというと疑問を感じざるを得ない事例が少なくない。システムをつくるのも使うのも結局は人であって、いかに優れた人材を育成するかにかかっていることにかわりはないのである。

人材をキーワードに物流業界の改革を目指すイーソーコドットコム代表取締役・早﨑幸太郎が、ITシステムと人材サービスを融合させた事業展開を図る気宇の代表取締役・木原佑介氏に聞く。

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【右】木原佑介:気宇株式会社 代表取締役
【左】早﨑幸太郎:株式会社イーソーコドットコム 代表取締役
【撮影場所】co-ba Re-SOHKO

 

起業は既定路線 会社設立までの14年間

早﨑:木原さんが代表を務める気宇株式会社は「システムとデザインで世の中を変える」をテーマに、ITシステムの受託開発をはじめとする事業を展開されています。開業までの経緯をお聞かせください。

木原:実はもともと会社をやるつもりで社会人になりました。親は飲食業を経営していて、漠然と自分も社長になるのだろうなと。大学も行くつもりはなかったのですが、あるとき日経新聞のトップに「パソコンができるITコンサルタントは年収3000万円」みたいな見出しがでていまして、これだと思って大学に行きました。パソコンを積極的に使う学部だったのですが周りのレベルの高さに絶望し、入学1週間後には退学を決意してすぐに未経験OKのITエンジニアに応募し、運良くシンプルネットの創業メンバーとして働き始めました。その後は父が経営する飲食店やIT向け人材派遣会社の役員を経て、ヤフーの子会社のインディバルに入社しました。
そしていつの間にか35歳になって、そろそろやばいな、と思って立ち上げた会社が気宇なのです。結局、社会人になって気宇をはじめるまで14年くらいかかっています。

早﨑:自分のなかで社長になることは初めから決まっていたということですね。大学をやめられてから10数年たっていますが、その間経験された職種は全てIT系ですね。

木原:そうですね。最初に未経験の私を育ててくれたシンプルネットは出版系のITで、電話帳やカラオケの早見本などをつくっていました。退職後、親の事業の手伝いを経てIT系の人材派遣会社の経営に関わっていたのですが、そこで縁があったのがインディバルです。

早﨑:物流業界でITというと何でも解決するようなイメージを持っている人が多いのですが、実際はプログラミングする人もいれば、WEBデザインをする人もいる。さらにSEOのような職種もあって、分野が細かくわかれています。そのなかで分野に関わらずやってきたのですか。

木原:主にエンジニアではあったのですが、エンジニアにしてはしゃべれると言われて、営業に同行してシステムの話をしたりもしていました。14年もやっていて、エンジニアの業務だけをやっていたのは実は1年くらいです。プロジェクトマネジメントが大半で5~6年くらい。完全な営業も1年くらい。インディバルでは組織をつくる立場だったので、40~50人くらいのスタッフを集めてシステムをつくったりしていました。エンジニアをやりたいという気持ちはあったのですが、そのころはプログラミングしていると怒られました。そんな立場で自分が動くな、と。

早﨑:でもそういった立場では現場の様々なことを知っていなければなりません。経験ゼロから始めてそこまで到達するのは大変な苦労があったのではないでしょうか。

木原:死ぬほど働いていましたね。大きな声では言えませんが、最初の3年は月450時間くらい、その後も月600時間くらい働く事もありました。その後やはり体を壊しまして、今はそんながむしゃらに働くことはできませんし、しませんけれども。

早﨑:実は私も30歳までに社長になろうと決めていたので、起業した経緯をお聞きして私と似ているなと思ったところだったのですが、労働時間は似ていませんでした(苦笑)。 グループ企業の1つではありますが、私も29歳で今の会社の社長になりました。私も大学に入る際、建築とITの二択でITを選んだだけなのです。パソコンゲームが好きだったので、どちらかといえばITかな?くらいに思っていたのが正直なところです。 木原さんがそこまで自分を追い込んで働いたというのはなぜですか。

木原:そのころはIT系の人材派遣会社の役員をしていたので、従業員のためですね。資金調達のために事業計画を書いて投資家の前でプレゼンしたり、日銭を稼ぐためにエンジニアの仕事をしたり。

早﨑:そこから、気宇をつくろうと。

木原:まだです。実はそのころ子供が生まれることになりまして、子育ては一生に一度しかありませんからきちんとやりたいと思い、1年間仕事をやめて子育てに専念しました。生む前から病院にも全部付き添いましたし、生まれて初めて抱っこしたのも、最初にお風呂に入れたのも私です。離乳食も作りました。その後、インディバルに縁があって入って、そこに6年いました。

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やる気を支えるのは縁と人脈

早﨑:木原さんは縁というか、人とのつながりが仕事や進路に影響することが多かったようですが。

木原:そうですね。今の仕事も100%紹介でいただいているので。人に助けられている部分はすごくあると思いますね。 でも私は人脈をぜんぜん大事にしていませんでした。先輩にはよく人とのつながりを大事にしろと言われていたのですが、真剣に考えたことがなくて。でも自分で会社をやってみたら人脈以外に何もないことに気が付いて。

早﨑:変に人脈を大事にしすぎるというか、人脈をつくることが目的で人とのつながりが全然活かされていないみたいな人もいます。私もよく交流会をセッティングするのですが、見ているとわかりますね。人脈を活かすというのも能力のひとつだと思います。 そういう縁もあって出発された「気宇」ですが、何をコンセプトに事業を展開していこうと考えられていたのですか。

木原:今はシステム開発をメーンにしていますが、実は一度大失敗をしています。起業するまでにいろいろ調べておこうと考え、世界と日本で様々なモノの価格を比較してみたのです。その結果、日本ではアパレル類の価格が圧倒的に高いことを知りました。なかでも高いのが靴で、日本では数万円もする靴がヨーロッパでは1万円くらいで売っている。これを自分たちで売ったら儲かると思いまして、日本人の現地バイヤーとやりとりをして直接買い付けました。全部で1,500万円くらい使って、在庫を持たないドロップシッピングも合わせて3,000足ほどの靴を販売するECサイトを立ち上げました。ですがこれがもうびっくりするくらい売れなくて。

早﨑:聞きにくいですが、なぜ売れなかったのですか。

木原:靴は履いてみないと買えませんし、あまりに安すぎて信頼感もなかったようです。広告費もかけて宣伝して、数万件のアクセスがあったのに1個も売れない。びっくりしました。ネットオークションに出品したものがいくつか売れただけで、まだ在庫が残っています。1ヶ月くらいでサイトを立ち上げて女性誌にも広告を出したりしましたが、問い合わせの電話が1件あっただけでした。結局、得意なことをやらなかったのが敗因だったと思います。

早﨑:そこで得意な領域であるシステム開発に戻ってこられた。

木原:そうですね。借金もあるし困っていたときに、たまたま道で以前取り引きがあった会社の社長に会いまして、起業した話をしたら相談したいことがあるから来てくれと言われて、行ってみたらすぐに仕事をくれました。そこからその方の紹介や、私がシステム開発をやり始めたことを聞きつけた他の方からも仕事をもらえるようになりました。

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得意分野に特化することで組織を伸ばす

早﨑:物流は、品質の差別化が難しい業種といわれています。大手でいえば日本通運、ヤマト運輸に佐川急便、西濃運輸などいろいろとありますが、いずれもモノを運ぶという点で見れば、ユーザーからは変わりなく見えてしまいます。そこで、ただ荷物を運ぶだけではなく倉庫での保管をしたり、仕分け業務や物流加工をしたり。もっと言えば原料から製品を作って、運んで、ディスプレイして売るというところまで、そこまでやれば差別化できる点も多くなってわかりやすくなるのですが、実際はそうはいきません。私もITをやっているのでわかるのですが、特にシステム系のITは表面的な違いが分かりにくい業種です。何か差別するうえで取り組まれていることはありますか。

木原:直接的な差別化ではないのですが、向いていないことはお断りしています。例えば広告を集めて問い合わせ件数を増やすようなランディングページの製作依頼は多いのですが、お断りしています。内部のシステムがからんでいないということもありますが、問い合わせが来るようなライティングもできませんし、写真も撮れません。私たちがやるのはデータベースとそれを表示するウェブシステムで、そこに特化しています。

早﨑:得意分野に特化しているということですね。イーソーコグループでもウェブメディアを持っていまして、倉庫物件の検索サイト「イーソーコ.com」などがその代表です。これなどは木原さんが得意とする分野かと思います。 木原さんの会社ではデザインする方とシステムを作る方が一緒にやっていますが、システムの構築は別の会社に依頼したいとか、デザインは必要ないといった依頼が来ることもあるかと思います。別の会社と組まなければならないとき、意思の疎通などで困ることはありませんか。

木原:私たちは基本的にどちらも自社でやるようにしていますし、外部と協力する際も綿密な打ち合わせを重ねて、丸投げするようなこともしません。丸投げすると楽ですが、全然違うものが出来上がってきたりして、それを修正したりするのに時間がかかります。結果として楽ではないです。

 

後編へ続く)


国際物流総合展2021