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気宇株式会社 代表取締役 木原佑介 ― 挑戦者に聞く 第5回(後編) 

【対談】改革をけん引するのは“人の力”

気宇株式会社 代表取締役 木原佑介
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株式会社イーソーコドットコム 代表取締役 早﨑幸太郎

 

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前編の続き)

 

仕事を任せて責任感を育てる

早﨑:イーソーコグループの母体は物流不動産です。メーンとなるのは倉庫物件とテナントとのマッチングという不動産業に近いビジネスなのですが、プレイヤーの育成が重要になってきています。例えば不動産業やデベロッパーで活躍されていた方が来られても、物流との文化の違いもあってなかなか結果を出しにくいようです。もともと物流業は不動産業とは真逆で、1個運んで何銭という世界。1件決めて数百万円の不動産とは違うのです。そういう下地がわかっていないと、倉庫を誰にどう貸していいのかさえわかりません。そこで若手を採用して、物流も不動産も経験させて育てています。物流にはマイナスイメージを持つ人も多いので、それも払しょくさせよう、まだ儲けることができる業界だということをアピールしようと、人材教育には力を入れています。木原さんは今後スタッフを増やそうとか、育てていこうというビジョンは。

木原:経験者はどうしてもコストが高いので、学生から育てていこうと考えています。シンプルネットでは学生アルバイトが多くて、みんな授業が終わってからバリバリ働いて深夜に帰るという働き方をしていました。社員より圧倒的にクオリティが高くて、学生のアルバイトなので低賃金。優秀な学生には納品まで任せていました。そのまま入社してほしかったのですが、みんな素晴らしい企業に就職していってしまいました。

早﨑:やはり大手に流れるのですね。

木原:でも学生が新入生を連れて来てくれて、特に何もしなくても人は集まっていました。そしていつの間にか学生が学生を育てるような循環ができていました。

早﨑:それは素晴らしいですね。でも教えたいこととのギャップがでてくることはありませんでしたか。優秀な学生とはいえ、きちんと教えているかどうかチェックもしなければなりませんし。

木原:これは経験からなのですが、ある程度まかせた方が人は育つと思います。私も最初は人差し指でしかタイピングできなかったのが1週間くらいで初めての仕事をこなせるようになって、仕事をすると人は成長するということを覚えました。突き詰めていくと、社会人にいちばん必要なスキルは責任感だと思います。責任感は、お金をもらう実際の仕事でないと生まれません。すぐにやめてしまう人も、何かを成し遂げられない人も。そこに原因があるといっていいかもしれません。つまり約束を守れるかどうかということです。

早﨑:確かに、そんなに大切な仕事をしていない立場の人の方がやめてしまう場合が多い気がします。大切な仕事を与えることができないからやめてしまうという面もあるのかもしれませんが、やはり大切な仕事ほどきちんとやろうという気になります。

木原:ですので、前職では育てるために仕事を与えるということを重視していましたね。6年間で、私が採用したのが40~50人くらい。開発職はけっこう離職率が高いと言われているのですが、一人しかやめませんでした。それもポジティブな退職で、もっと派手なことをやりたいといって大手のIT企業に入りました。

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上司の仕事は質問を受けること

早﨑:木原さんが育てた人材がほとんどやめなかったのは、責任感を持たせることを意識した結果があらわれたということですね。育てたりやりがいを与えたりするためにはスキルより上の仕事をやらせるのが常道ですが、しかし実際はそのさじ加減が難しいところです。多くの経営者が苦労しているのではないでしょうか。

木原:そうですね。やりがいというとチープな言葉ですが、しっかりとした重みのある仕事を与えていましたね。そして、それをちゃんと見てあげることです。
私は上司のいちばん大事な仕事は「質問を受けること」だと考えていて、日中はできるだけ暇な状態で席に座っていました。「10分悩んだら聞け」というのを徹底していて、とにかく自分に質問を集中させるようにしていました。この時代に10分間も調べて答えがでなかったら人に聞いた方が圧倒的に早いです。

早﨑:私も、忙しくてもひとの話をきちんと聞こうと心がけてはいるのですが。私は忙しい時に話しかけられると聞き方がきつくなることがあるので、ある女性スタッフから話しかけるのが怖いと言われたことがあります。それ以来、改善するように気を付けているのですが、なかなか難しいです。
スタッフの話を意識してきちんと聞くというのは、何から学んだものなのですか。

木原:1社目のシンプルネット時代の影響が大きいですね。初出社日が21歳の若造5人で古いITや出版の仕組みを変えていく会社を作るというタイミングで、とにかく自分でやるしかなく必死でやっていました。その後スマートニュースの鈴木健さんが取締役としてやってきて10分悩んだら聞けと言われ、さらにベンチャーキャピタルから出資を受けて組織が急拡大した時にメンバーの話はよく聞くことを学びました。ちなみに鈴木さんとはよく働く人同士で、2人で夜中の3時からミーティングをしたりしていました。

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ITにも物流にも改善の余地がある

早﨑:木原さんのご経験をお聞きしていると、ITが変革していくその渦中にいたことが実感できます。イーソーコグループでは物流を改革していくという大きな目標があるのですが、木原さんは今の物流業界にどんなイメージをお持ちですか。

木原:ある物流施設を見学したことがあるのですが、そこは想像と全く違いすごく機械化が進んでいて驚きました。手元の端末で品物の場所を確認してから取りに行くような仕組みが導入されていて、ITの普及が早いという印象を持ちました。

早﨑:確かに、そういったシステムも普及してきてはいます。しかしそこまでできているというのは実はごく一部で、まだまだ品物を手で降ろしていたりする倉庫の方が多いくらいです。自動化やIT化が必須といわれながら、それに対応できる施設とできない施設とのギャップが大きくなっているというのが現状です。

木原:そういった点も踏まえて今後のことを考えると、私はあと5年くらいで物流が大きく変わると思っています。その理由がドローンです。ドローンが5kgくらいの荷物を運べるようになったら、一家に一台の時代が来ると思います。配達に来るのではなくて、自分の家のドローンが荷物を取りに行く。コンビニもいずれは店舗がなくなって、商品をドローンが取りに行ってもってくる。その方が効率的ではないでしょうか。それに付随して、一家に一台ドローンを普及させるためにはどんなソフトが必要か、といった想像をよくしています。衝突回避のためのシステムが要るとか、建物の屋上にフリーの充電場があれば便利だとか。考えていると楽しいですね。

早﨑:ドローンは物流における新しい仕組みとしてどんどん普及していくでしょうね。先日対談した方が、仕組みを変えていけば業界が変わっていくということを言っておられて、それを実践している方でした。私たちも人材育成を通じて物流の新しい仕組みづくりに貢献していきたいと考えていたところでしたのでとても共感しました。木原さんも何かのアプローチで世の中を変えていこうとか、そういう思いはお持ちなのですか。

木原:私は欲が全然なくて、小さい頃から欲しいものがないです。会社にも大きな目標はなくて、社員を守るためであったり、お客さんとの約束を守るためであったり、そういう積み重ねです。困っている方がいたら積極的に手を差し伸べますけれども、自分から何かやっていこうというのはあまりありません。でもいろいろな会社のサイトをリニューアルしたり、システムを見たりしているうちに世の中のITのレベルがすごく低いことに気付きました。こういうと生意気ですが、それを改善していく仕事はたくさんあると思っています。
今は起業から2年たってようやく負債も帳消しにできたので、そろそろ新しいことをやろうかというところです。夏をめどに、自分の得意分野を活かして新事業を立ち上げようと考えています。人材とITを組み合わせたニッチなサービスを作って、まずはそこで一番になりたい。目標というか、そういう思いはありますね。

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良いオフィスは信頼感につながる

早﨑:イーソーコグループが展開している倉庫のリノベーションも、もとは空き倉庫の活性化が目的です。倉庫や物流に寄り添ってきた経験と不動産のノウハウを活かしたという点で、まさに得意分野といえるかもしれません。貴社が入居されていたこのビルも倉庫をリノベーションした建物ですが、そもそもなぜこのビルを選ばれたのですか。

木原:以前のオフィスは民家だったのでお客さんの出入りも禁止されていましたし、会議室もなかったので、まずはちゃんとしたオフィスに入りたいなと思いまして。ここは初期費用も予算内でしたし会議スペースも立派で、すぐに決めました。来客の評判も良くて、ここにいたことでまとまった商談もあったと思います。開業して半年くらいの企業がこうしたラウンジのあるオフィスを構えているというのは、信頼感につながったと思います。

早﨑:移転先もやはりリノベーションされた物件なのですか。

木原:実はマンションの1室です。キッチンが欲しくなって。でもここに来てから会社として成長することができましたし、リノベーションされた空間の良さも捨てがたいのですが。次に移転するときはまたお世話になるかもしれません。

早﨑:是非お願いします。

 

コーポレートサイト:気宇株式会社