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コマーシャル・アールイー インベストメント事業本部長・首都圏事業部長 井口隆之氏 − キーマンに聞く 第5回 

 「キーマンに聞く」第3回目は、事業用不動産を中心に事業展開し、物流不動産開発事業にも力を入れる㈱コマーシャル・アールイー(JASDAQ  8866)のインベストメント事業本部長・首都圏事業部長の井口隆之氏。同社では倉庫を中心にサブリース物件の実績(中小施設を中心に700件)をもと に、オーナー、テナント双方にメリットの高い活用法を見出すことに尽力。さまざまな選択の中で物流不動産ファンドを活用し、高い評価を受けている。今回は 同社の物流不動産開発事業の推進役である井口氏に、同社の事業展開と物流不動産への考え方について、お話を伺った。

コマーシャル・アールイーの井口氏

―経歴についてお聞かせください。

 1994年に筑波大学を卒業し、9年半に渡って大和銀行に在籍。入社後に窓口業務、融資・審査業務、外為業務を任され、その後は法人向け・個人向けの営業、外国為替ディーリング・デリバティブ商品開発などさまざまな業務を経験いたしました。

 その中で行った不動産仲介や投資信託の業務を契機にして、“不動産の証券化”に興味を持ち、事業用不動産企業のコマーシャル・アールイー(当時・幸洋コーポレーション)に移ったのが2003年のことになります。

 いくつかある不動産ファンド事業を行う企業のなかで、入社の決め手となったのは、物流事業への強みと実績でした。1980年に設立され、物流施設 を中心にサブリース事業を展開していたコマーシャル・アールイーは事業拡大のため、AM(アセットマネジメント)事業の立上げを模索。金融業務知識を持つ 人材を探していました。

 ほかの不動産ファンド企業と違って、倉庫・商業施設などのサブリース物件700件の実績があり、地に足を付いた強みがあるなか、今後、業界の競争が激化したとしても堅実に伸びていける素地は整っているだろうと考えたからです。

 ―その後、不動産ファンド事業の推進役として、関わられたわけですが、いまの状況をみると、予想は的中したようですね。

 ええ。
 当初はAM事業本部の1事業部(ファンド事業部)として、わずか8名のメンバーで新規事業の立上げに従事し、1号ファンド(2004年3月)ではおもに 300坪から1000坪程度の既存小規模物流施設・商業施設を取得してファンドを組成したわけですが、2号ファンド以降、新規開発に軸足を移していきまし た。その後新規開発の規模も大型施設の占める割合が多くなり、開発を手がける件数も順調に増えてきております(ファンドアセットへの総投資額は約350億 円。現在のポートフォリオの内訳は倉庫87%、商業施設8%、オフィス4%、その他1%)。

 そうした中で、最初は1事業部で不動産ファンドに関わる物件取得・開発から運用までを行っていたわけですが、ファンド事業が軌道に乗り、投資資金 が集まる中で、それに見合った物件仕入れの強化を図る必要が出てきたわけです。そこで2005年4月には物件取得・開発部隊を独立させ、インベストメント 事業部としてスタート。同部の旗振り役として私が就くこととなったのですが、開発事業が拡大していく中で、メンバーも増え、今年3月には事業本部へと昇 格。

 現在、インベストメント事業本部だけで、人員は約40名に達するまで成長しています。事業本部の構成としては、開発を取り仕切るプロジェクトマネ ジメントの部隊として、東日本エリアを担当する首都圏事業部、西日本エリアなどを担当する西日本事業部、ほかに開発・建築全般を担うコンストラクションマ ネジメント事業部を含めた3事業部体制で動いています。

 ファンド事業に関わる組織体制について付け加えると、2005年10月、AM事業本部の中から、さらにファンド運用の部分を分離・独立させる形で、㈱CRE投資顧問を設立。より投資家様の立場にたった組織へと変更を加えています。

 また一方の柱であるPM事業本部においても、2006年12月に再編を行い、基盤となるサブリースに特化したサブリース事業部、テナントリーシング・管理受託を行うプロパティマネジメント事業部を創設しています。

 物流不動産事業に関わる、それぞれの機能を明確化させることで、従来以上に、幅広い要望に応えられる事業体制が構築できたと思っています。

 ―物流不動産ファンドに関わるプレイヤーは数多くいますが、そうしたなかコマーシャル・アールイーの特徴はどこにあると思いますか。

 当社はもともと倉庫・商業施設などのサブリースからスタートした経緯があり、ほかの多くのプレイヤーと違って、テナント様との強いパイプを持っており、物流事業で実績を重ねてきた強みがあります。

 そのサブリースにしても、200~300坪クラスからの比較的、中小規模の取扱いが多く、コンバージョン(商業施設・駐車場への転用化)などで収益を上げる取り組みも行っていました。

 こうした地道な実績を活かし、ファンドを活用した開発事業にも着手し、物流不動産のノウハウを身に付けてきたわけです。2005年11月には日本 ロジスティクスファンドの資産運用企業としても参画しているケネディクス㈱と資本業務提携を締結。ケネディクスのノウハウを取り入れることで、よりハイク オリティの事業が展開できるようになり、またケネディクスに対しては逆に当社のPM力を提供する関係ができるなど、ビジネスの枠を広げていきました。

 物流不動産市場は周知のとおり、海外を中心に投資が増え、投資としての物流不動産が確立。これは物流業者にとって多大な影響を与えてきたわけで す。玉突きなどの現象が起こる反面、高機能型の超大型施設が建てられたことによって、本当にいい施設が提供できるようになった側面もあるわけです。

 当社ではサブリースを行ってきた企業文化を活かし、中小倉庫事業者に対するケアを含めた対応を図りつつ、一方では従来のビジネスに安住せずに、 ファンドを活用した大型の高機能型施設開発によって、集約化、3PLへの対応、オフバランス化の流れのなかで出てきたニーズにも応えていきます。

 利益のみを追求した超大型施設の提供に限定するのではなく、オーナー様、テナント様双方にメリットのある様々なタイプの物流施設を提供していきたい、と考えています。

 ―これまでファンドに組み入れた新規開発物件は何棟ありますか。

 2006年3月竣工のCRE加須物流センターを皮切りに、2006年には千葉北CRE物流センターⅡと加須物流センターの2棟を竣工。2007年 にはCRE三郷物流センター(延べ床面積約6000坪)、CRE瑞穂物流センターA棟(同約4400坪)、B棟(同約5200坪)、CRE松崎物流セン ター(同約1800坪)、CRE鳥栖物流センター(同約4300坪)の5棟、計7棟を竣工させています。

 開発段階を含めると2008年竣工として神奈川県相模原市宮下(同約7000坪)、埼玉県加須市南篠崎(同約8000坪)、千葉県市川市田尻(同 約5900坪)、千葉県八千代市大和田新田(同約4700坪)、千葉県印西市松崎工業団地(同約1800坪)、千葉県成田市浅間(同約1700坪)、 2009年竣工として福岡県筑紫野市古賀(同約3万坪)、埼玉県(同約3400坪)で、それぞれ物流施設を建設する予定となっています。

 ―今後の事業方針についてお聞かせください。

 物流施設開発はこれまで、首都圏が中心となっていますが、今後はエリアを拡大し、地方に対しても地域特性に合わせた形(オーダーメイド型施設の提 供など)で、投資を進めていきたいと考えています。特に九州地区については商業施設の開発件数が多い割に、物流施設の取り組みは少なく、強化していきたい と思っています。

 開発の枠を広げる一方で、物流施設をファンドに組み入れる動きも継続して行っていきます。中国地方についてはすでに2005年に広島、2006年 に岩手の物流施設を取得し、首都圏・九州地区中心の展開からエリアを拡大させていきましたが、今後も中国地方で物件を取得する予定です。

 エリア・事業の枠を広げることで、物流不動産市場に貢献できればと考えています。

▼コマーシャル・アールイーHP
http://www.commercial-re.co.jp/

▼(参照)キーマンに聞く 第2回目
コマーシャル・アールイーシニアディレクター
文化ファッション大学院大学准教授
鈴木邦成氏
http://www.butsuryu-fudosan.com/2007/08/brbrbrbr.html