物流不動産ニュース

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延 嘉隆の物流砲弾<3>ドM体質がもたらす根拠なきノンアセット幻想 




■儲からない深掘りに勤しむ“ドM”体質

「Q.なぜ、物流不動産を絡めた儲け方にチャレンジしないのですか?」

この問いに明確に答えられる物流マンは少ない。別の機会に改めて記すが、それどころか、物流業界には根拠の無い“不動産蔑視”のようなモノの見方がある。なかには、「先代からのポリシー」という方もいるが、そういう方は“As you like”。

ビジネス視点で、“物流不動産を絡めて儲けろ!”との主張を否定出来るのは、物流不動産ファンドよりも高い利益率を出している企業しかいない。しかし、そのような企業はない。前述の引用記事の数字を割り返して、利益率(%)を出すと明白だ。

本来、経営者がナレッジを注力すべきは、儲けることができるビジネス領域にある。しかし、物流業界で大盛況なのは、「何とか物流」という“言葉遊び”ばかり・・・。

結局、自らの殻から出ることも、チャレンジすることもなく、“不平・不満”をホザきつつも、居心地のいい現状に甘んじる。また、業界の自称顔役や識者から聞こえてくるのは、“遠吠え”ばかり。一切の行動を伴わず、“青い鳥”を待っている光景が奇異に映って仕方がなかった。これが、物流業界に身を転じてからの10年間の率直な感想だ。

「Q.あなたたちが、大事だと思っていることを追求した結果、儲けは出せたのですか?」

このことを直視することなく、カネになるワケでもない“深掘り”(自己満足?)を血眼になって興じる意味が解らない。ビジネスに繋がらないお勉強なんぞ、所詮、自己満足。会社はもとより、個人で見た時にも、熱心なお勉強の結果、労働市場の価値(ギャラ)が上がった人は、果たして何人いるのだろうか? 無論、いなくもないのだろうが、比率で見れば、圧倒的少数派だ。“ドM”に儲からない深掘りする暇があるなら、まだ、英語でも勉強した方が、ビジネスマンとしての価値は上がる。

ついでに言えば、当人は、“深掘り”しているつもりでも、傍から見るとそうでもない。ビジネスどころか、“深掘り”している筈のオペレーションの核心を突くヤツも皆無。そのさまは、見ていて片腹痛い。「朱に交われば赤くなる」、だから、物流業界で大盛況のあらゆる“お勉強会”に関わらないようにしている。

齢43歳。既に、折り返し地点を過ぎた人生、ムダな時間を費やす余裕は無い。それ以上に、ビジネスマインドやセンスが無い輩と交わると、こっちの感性まで鈍る。無論、評論することで飯が食える学者やメディア、評論家は別だ。コンサルも“そっち”の側に属しているのが物流業界の一つの特徴でもある。

すべからく、ビジネスたるもの“儲ける”ことを考えるべきであって、儲からない深掘りをして悦に入る“ドM体質”から、とっとと、脱却した方がいい。でなければ、ビジネスマン失格だ。

■アセット(物流不動産)はリスクなのか? ~根拠なきノンアセット幻想~

未だなお、物流業界には、アセットは“リスク”という声が蔓延する。果たして、本当にそうなのだろうか? 長い目で物流企業の経営をみれば、結局、利益を出している会社は、アセットを所有している会社に他ならない。

稀に“4PL”などと称して“ノンアセット”を説く声もある。しかし、そのプレースタイルは、商流上、強い立場でプレー出来るコンサルか、グローバルにモノの流れを握っている外資系企業しか罷り通らないプレースタイルだ。それなのに、“ノンアセット”至上主義の結果、多重構造の弊害を増長させ、単なる“中抜き”プレイヤーが大量に誕生したのがこの国の物流現場の実態だ。付加価値なき多重構造は、顧客の利益に適う筈もない。

ゼロ金利の時代に投資をせず、ことさらにリスクを取らない物流偉業の利益がスカスカなのは、当たり前のこと。儲かる事業構造がないのに、やれ人材教育だ、やれ社員のコンサル化だとホザいても、焼け石に水。そもそも、御社は、コンサル会社などのインテリジェンス領域水準のギャラを手にする“高スペック”な人材を採用しているのか?

(勉強自体をムダという気は毛頭ないが)あなたたちは、「座学で仕事が獲れる」、「お勉強をすれば儲ける」と、本気で思っているほど世間知らずなのか?それでは、数字で結果を出せない。経営者自身の甘さを直視すべきだ。

冷静に考えれば明白だが、「出来ない人に出来ないことをやらせる」のではなく、「出来ない人にも出来るビジネスを構築してやる」のが経営者の務め。また、「人材教育や人づくりが大事なこと」と、「経営やビジネスとして投資とリターンの関係性を構築していくこと」を履き違えている経営者ばかりなので、物流業界の社会的地位がいつまでも高まらない。

“儲ける”選択肢の一つに「物流不動産ビジネス」を考えてみるべきだ。もっとも、「物流不動産ビジネス」に踏み込むと、“与信”という壁と向き合うことになる。その壁を越えられないとしたら、それこそ、御社の現状のどこかに問題点があるのだ。寧ろ、率先して自社の“構造改革”に取り組まなければ、輝かしい未来は基本的に無い。

■物流業界最大の“ガン”は懐古主義の自称“顔役”にある

物流業界には、現実から目を背ける悪い“癖”が蔓延っている。「物流業界を魅力的な業界に・・・」とホザく自称“顔役”の言葉、あるいは、「金儲けのために物流をやっているワケではない」と公然と宣うオピニオンリーダーの言葉に、“現実逃避癖”が象徴されている。この手の輩こそ、物流業界のガン。まるで、一昔前の自民党の長老の弊害を見ている気分でムナクソ悪い。

ドサクサで言えば、だいたい、物流業界紙(誌)に出ている“顔役”気取りのベテランの皆様が、軒並み“イケ”てない。ファンションセンスの無さは論外、“今どき”の若い人たちが、あなたたちを見て、「物流業界に入りたい」、「そうなりたい」と思うか?冷静に考えて欲しい。真に、物流業界の将来を案じるなら、“去る”という選択肢が懸命であることに言及しておきたい。

自ら“変わる”ことが出来なければ、物流業界の何も“変える”ことは出来ない。物流業界を“変える”のはとても簡単だ。若くてキレイな女性が大挙して押し寄せるような業界、女性が一番働きやすい業界に“変わる”だけでいい。「女性・ワカモノ・異業種出身者」の参入があれば業界は“変わる”。その参入障壁は、いつまでも、“古き良き時代”を捨てられないオピニオンリーダー気取りの“顔役”だ。

物流不動産蔑視の誤った風潮と、それを鼓舞する“顔役”の存在。そして、物流業界の置かれている窮状は、“因果応報”と思えて仕方がない。

●延嘉隆氏プロフィール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
株式会社ロジラテジー代表取締役。
物流企業経営の視点で、財務戦略(事業承継・M&A・企業再生)・マーケティング戦略を融合し、物流企業の価値を上げる物流コンサルティングファームとして評価が高い。
物流企業を中心に、事業承継・相続、物流子会社の売却など、“ロジスティクス”、“卸”、“小売”などの財務課題で、卓越した経験を有する一方で、物流現場に作業員として入り、作業スタッフとの対話に勤しむ一面も。延氏の詳しいプロフィールはコチラ。

*本連載に関するお断り