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物流不動産はこれからも発展する▼イーソーコ・大谷副社長が講演 

2010年04月18日

 ロジスティクスIT研究所主催の業界別物流実務家によるロジIT研讃会の4回目として、「物流業界の生き残り策 物流不動産を活用した“新しい物流営業”」が行われた。イーソーコ総合研究所の花房陵・主席コンサルタントを司会進行役(ファシリテーター)として、イーソーコ大谷巌一・副社長が講演を行った。
 ▼テーマ「物流不動産の活用」背景
 物流不動産と言えば昨今の巨大物流施設を思い浮かべるが、この背景にある金融業界の実態に迫ってみよう。まず金融という金が金を生むしくみの根源には、銀行業の特権と規制がある。預金準備率とは何か、金利とは何かを知ることで、資金の流れの真の姿が見えてくる。
 まず日本銀行を頂点とした金融機関の体制は銀行法によってきっちりと規制されており、新規参入はソニー銀行、IY銀行の顛末でも分かるようにやたらと厳しい参入障壁がある。それはなぜか。
 銀行は預金を集め、その預金を融資という形で経済に潤滑を与えて金利という収入を得る。重要なことは預金額と融資額の乖離にある。つまり、準備率とは預金額から一定の割合で日本銀行に上納し、預金払い出し請求に備える制度である。現在の準備率は0.1%、つまり100万円の預金を預かった際には日銀に1000円を上納する。残りは貸し出し可能額として銀行に残る。融資希望者は審査を受けて彼の通帳に融資額が記載される。融資を受けても直ちに現金を必要とはしない。預金払出までには時間がある。
 融資が通帳の残高記帳になっている際にも借り入れ金利は発生している。準備率が0.1%なら10億円の融資が可能となり、その融資は金利として年間5000万円~6000万円の金利収入を生むだろう。
 つまり、100万円の預金獲得で、経費は1000円で5000万円の粗利が得られる、これが金融ビジネスの正体なのだ。物流不動産の巨大メガセンターはこのような金融業界の資金によって建設業界の技術と物流業界の営業活動によって成り立っている。すでに建設ラッシュはピークアウトを迎えたと言われているが、最も遅れて参入してきた物流不動産開発業者は物流業界の運輸、倉庫、システム、労務派遣以上に稼ぎ、利益を積み上げ、徐々に拡大してきた。わずかな従業員で莫大な資金を利用し、次々と開発される物流不動産新センターにはどんな魅力が残されているか。イーソーコを12年引っ張ってきた大谷副社長が語った。
 ●大谷氏講演の趣旨
 1.将来を悲観せよ、頼るものは自分以外にない。
 「国内貨物輸送量が年々減少し、平成22年度には遂に40年ぶりの50億トンとなり、今後も減少していくと見られている。物流業界の現状は悪化の一途を辿っている」とし、そうした現状を政治が何かしてくれると期待しても「自民党政治からの変革に期待した民主党政治が混乱している状況下では何もやってくれるはずがない」と述べた。 「物量が低迷し新たな産業の成長も兆しが見えない今、輸送や保管、物流作業に業績復活の期待を持つことすら不安材料ばかりだ。中小連合の強みはニッチ産業の発見と強力な差別化であるが、長く研究され尽くしてきている物流改善や合理化にも物量の伸びが期待できない以上、経営改善の余地は少ないと言っても過言ではない。このよう現実を正しく認識して、旧来の輸送保管作業の物流サービスだけにしがみついていては将来が読めない。」 物流業界悲観論を幅広く主張した後に、大谷副社長と物流不動産ビジネスへの参入を共に果たした物流事業者が好調な業績を上げている事実を示した。売り上げ利益共に成長している事実だった。 「企業も個人もゆで蛙となる前に意識改革を図り、他社との差別化を図り、自社の強みと弱みを補完しあうネットワークを構築していくことが重要」と解説。
 2. これからも新しい物流施設が必要だ。
 「新しい倉庫はどこにあるか、集約すべき物流施設はどこに向かうのか。
 本来ならば倉庫不動産を扱うのは物流事業者ではなく、不動産免許を持つ不動産事業者であろう。しかしながら、物流施設は立地だけでなく倉庫の構造や作業員の確保など、単なる不動産と見ることはできない。物流の専門家としての視点が欠かせないのだ。物件情報は不動産業界から提供されても、現地現物を見て判断するには物流業者の経験がものを言う。多くの物流施設が荷主を失い、空き倉庫の登録は16000件まで膨らんできている。まさに物流専門家の判断と営業活動によって倉庫の仲介や販売、開発が求められているのである。
 自社の倉庫だけでなく全国に倉庫情報を持ち、全国の荷主からのリクエストに応える物流不動産ビジネスこそ、今後の物流業界にとっての必須事業ではないか。」と同社が事業展開するLSS(物流営業システム)への加入によってネットワークを開始することを強くすめて講演を締めくくった。
 ▼物流不動産はこれからも発展する
 物量低迷により供給過剰とも言われている物流施設であるが、退場するのは効率の悪い旧来型倉庫であり、勝者は新型倉庫である。金融業界、ファンドなどの潤沢な資金が低金利時代を反映して、ローリスクローリターンの代表として物流施設投資に向かう事情を見れば、さらなる供給が物流倉庫の移転統合の巨大な需要を生むことは確実。輸送保管作業拡張に物流不動産ブローカー業務を取り入れることが新たな展開を開くだろう。