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輸送経済▼自治体の物流意識に不安 

2012年04月16日

【輸送経済(http://www.yuso.co.jp/)】
 東日本大震災を機に、防災対策を見直す動きが急ピッチで進む。震災では物流も混乱したことから、国土交通省は民間事業者のノウハウを活用できる体制を整備。3月には災害時の物資拠点として民間物流施設を選定した。一方、気掛かりなのは地方自治体の存在。依然、物流の重要性を認知していない自治体も多く、防災対策で不安の種は尽きない。
 国交省が、広域災害時に物資保管や仕分けなどを行う拠点として選定した民間物流施設は三百九十五カ所。大規模災害が懸念される関東、東海、近畿、中四国・九州の四ブロックでリストアップを進め、①支援物資用の供出面積②新耐震基準③交通アクセス――などを重視した。
 選ばれた民間事業者に対し、災害時に支援物資の保管を義務付けるなどの規定はないが、六十三施設には非常用発電と通信設備の補助金を交付しており、国交省は「補助した事業者は協力してくれるはず」と期待を寄せる。
 昨年の震災以降、国交省は物流事業者の施設やノウハウを重視しているものの、今回選定された三百九十五カ所の施設は「あくまで公共施設の補完」との位置付け。災害時に物流の主軸となるのは、内閣府の中央防災会議が広域物資拠点と定めた自治体の施設だ。
 だが、中央防災会議が指定した物資拠点の中には、災害時に本当に物流業務が遂行できるのか、疑問の残る施設も多い。
 例えば、昨年の震災で被害を受けた千葉県では県内七カ所の施設や公園を物資拠点として指定しているが、フォークリフトなどの運搬機材が設置されている施設は一つもない。
 東京は指定された全ての物資拠点で大型トラックの横付けや運搬機材の設置が可能なものの、八カ所のうち七カ所が老朽化など問題を抱える市場関連の施設。
 特に、築地市場は開場から七十五年以上が経ち、「老朽化した施設が首都直下型のような巨大地震に耐えられるのか疑問」との声が物流関係者からも上がっている。
 東京都では先月、築地市場の移転に向けた予算を成立。江東区豊洲に新市場を建設する方針だが、豊洲は昨年の震災で液状化現象が問題となった地域。仮に市場建設地の土壌を改良しても、周辺道路が水であふれトラックが通行できなければ、物資拠点としての意味は失われる。
 物資拠点のぜい弱さだけではない。自治体の動きで気掛かりなのが物流事業者や各協会との災害時協力協定の締結。
 災害対策基本法に基づき、各自治体はトラック協会や指定公共機関の日本通運と協力協定を結んでいるが、物資の保管や仕分けなどを行う倉庫協会とはほとんど締結をしていない。
 首都圏の場合、倉庫協会と協力協定を結んでいるのは埼玉県、川崎市、横浜市のみ。その他の一都六県三政令指定都市ではトラック協会などとの締結にとどまっている。
 昨年の震災では、自治体が物流関係者との協力協定を結んでいなかったことで混乱が発生。被災したある自治体では物資輸送や保管コストが掛かることを懸念し、自衛隊に物流業務を丸投げ。人命救助が最優先の自衛隊の業務に影響が及ぶ事態も発生した。
 「災害時協力協定の締結は事前に緊急支援物資輸送などの業務コストを話し合う上でも極めて重要」と物流関係者。
 国交省では今回の民間施設選定を契機に、自治体と物流事業者との間で協力協定の締結を拡大させたい考え。自治体がどこまで物流を重視しているのかが、今後の防災対策の鍵を握る。