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日本人の美徳を生かした丁寧な物流を守ろう 

 先日、新聞広告で稲盛和夫氏の言葉に感動した。少し長いが引用すると、「私たち(日本人)の祖先は勤勉・正直・親切・謙虚・素直・感謝という徳目を規範に幾世紀も暮らしてきた人たちであった。(中略)昨今は、隔世の感と、言わざるを得ない。この日本人の美質を取り戻し、後世に渡さなければならない」というものだった。
 この広告は、明治時代日本にやってきたハリス提督やイザベラ・バードが日本人の礼儀正しさ、勤勉などの美質を絶賛していたことを紹介している。福沢諭吉も、世界で日本が生き残っていくためには、「和魂洋才」、西洋文明を学ぶことは大事だが、日本人らしさを忘れずいるべきだと強調していた。現代は、あまりにも西洋的な物質礼賛主義がはびこり、ビジネスでもプライベートでも人の優しさ、思いやりを大切にする日本人らしさを忘れているような気がする。物流は、本来単に物を運ぶだけでなく、お客様の所へきちんと破損なく荷物を届ける気配り、思いやりといった心の面も併せ持つ仕事だ。日本全国どこでもリーズナブルな料金で運んでくれる宅配便、スーパーに並ぶ充実した生鮮食品などは日本人の勤勉・親切など美質が物流に現れている好例だと思う。
 日本人の美質を忘れ、短期の利益を追うだけのビジネスでは、目先にとらわれ、大きなチャンスには結びつかないように思う。このままでは、日本人の世界に誇る丁寧な物流が守れないのではないか心配だ。
 このような世相でも、若い人たちには探究心を忘れず、自らの心を磨き、日本人らしさを忘れずにいてほしいと思う。日本人の勤勉・親切などの美徳を身につけるためには、歴史や思想などを学ぶことが重要だ。ぜひ、若い人には儒教、哲学、仏教などの古典を薄い文庫本でもかまわないので読んでみてほしい。先人の知恵には、学ぶことが多い。孔子、孟子の教えは人間の心は善であることを基礎においており、1000年以上たった今でも色あせない知恵に満ちた言葉が並んでいる。温故知新の精神で、知の世界を探求すると自分自身が思っている以上に成長する。
 東京倉庫運輸の故・池田新一社長は毎朝、仏教の難しい話を社員一同に説いていた。若かった私にはわからないことが多かったが、そのとき話の意味を年とともに一生懸命考えるようになり、様々な経験、読書を経て、少しずつわかってきたことが多い。含蓄のある言葉は、すぐにはわからなくても、探究心を持って考えていくことが身になり、人生の支えになってくれる。若い人たちには、海外に行き、正しい教えの本をたくさん読み、世界に誇る日本人の美徳を身につけてほしい。

<プロフィール>
 池田光男 1969年5月米国オクラホマ州立大学大学院卒業後、米国での会社勤務を経て、71年11月東運開発専務取締役、87年5月代表取締役に就任。72年4月東京倉庫運輸社長室長、89年6月常務取締役、91年6月取締役副社長などを歴任し、現在、東運開発代表取締役社長。Council of Supply Chain Management Professionals(CSCMP)会員、国際委員などを歴任。