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師走総選挙▼解散時期「最悪」の声 

2012年12月03日

 【輸送経済(http://www.yuso.co.jp)】
 野田佳彦首相による突然の「解散宣言」。永田町では来月16日の一大決戦に向け、各党とも総選挙への準備を進める。一方、29年ぶりの師走選挙に突入したことで来年度予算や税制の議論は中断。政権が替われば、予算編成が年明けとなる公算も大きい。臨時国会に提出中だった物流関連法案も廃案となり、業界からは「最悪のタイミング解散」との声も上がる。
 臨時国会は当初、10月29日~今月30日まで33日間の開催予定だったが、突然の解散により2週間前倒しの形で閉会。特例公債法などは駆け込みで成立したが、ほとんどの法案は審議されずじまいだった。
海コン法の廃案は物流軽視
 物流関連では、海上コンテナ輸送の安全を確保するための法案(海コン法案)や交通基本法案がともに廃案。特に受荷主が海外の発荷主から重量や品目などのコンテナ情報を取得し、ドライバーへの伝達を義務付ける海コン法案は、トラック業界も強く求めていただけに落胆の色は濃い。
 都内の事業者は「関越道の高速ツアーバス事故では、各党が安全対策に集中砲火を浴びせたのに、事業者の安全を守る重要法案は審議された形跡すらない。今回の廃案はさすがにひどい」とし、物流軽視の姿勢に憤る。
 海コン法はトラック協会や労働組合からの要望が強い。国土交通省も次期通常国会での法案提出に向けた準備を進めるとみられるが、「提出と廃案を繰り返す状況を新政権がどう見るか」(運輸労連)との指摘もあり、今後の動向に不安を残す。
 来年度の予算編成や税制改正の遅れが物流事業者に影響を与える可能性もある。予算編成は年内の閣議決定を経た後、3月までに国会で成立させるのが通例。しかし、年末に選挙が決まったことで作業は中断。来年に持ち越される公算が大きい。現状では予算の行方が「全く読めない」(国交省)状態だ。
来年度事業遅れの懸念
 高速ツアーバス事故を受け、国交省は監査体制の強化や車両機器の導入補助といった安全対策に約13億円の予算を要求しているが、決定が遅れれば事業の開始がその分ずれ込む恐れもある。
 復興以外の予算使用が問題視されている全国防災対策費の中で、物流拠点の荷崩れ防止や非常用通信・電源設備の導入補助を行う事業もあり、「政権の考え方次第で予算が一層厳しくなることも予想される」(同)。
車体課税見直しも中断 企業の計画策定にも影響
 自動車の車体課税見直しを中心とする税制改正議論もまだ先行きが見えていない。自動車業界では1月をめどに次年度計画を策定。荷主の動向がある程度まとまった後、物流事業者も予算や設備投資などの編成に入るとされる。
 だが、年内に決着するはずだった車体課税の議論も越年が決定的。
自動車販売で一部陰り
自動車物流を主力とする事業者は「来年はメーカーの計画も遅れるはず。税制改正が決まらない段階では予算組みすらできない」と頭を抱える。
 日本自動車販売協会連合会の統計では、乗用車の新車販売台数が9月以降、前年を下回っている。エコカー補助金が終了してない時期から販売台数が減少するなど消費マインドの陰りが見え始め、「自動車取得税と消費税の二重課税の問題を解決しないと自動車物流は一層厳しくなる」との指摘もある。
 政権交代を求める声は以前から物流業界にもあったが、「今回のタイミングはあまりに最悪」(東京の事業者)。選挙結果次第では国会がますます混乱する可能性もあり、予算や税制、政策などで物流業界が政治に振り回される懸念が残る。(小林 孝博)