物流不動産ニュース

物流、物流不動産、倉庫を網羅した
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物流の基礎は信頼関係にある 

 最近、景気が悪化しているせいか、教育の力が衰えているのか原因はよくわからないが、若い人たちが日本人であることに自信をなくし、人間関係も殺伐としてきているように思う。私は、常々日本人の良さは真面目さ、勤勉さ、礼儀正しさにあると思っている。また、その美質を日本人が持ってるからこそ、日本社会はお互いを信頼し、安定しており、世界でも有数の安全な国だったはずだ。こういった日本人、日本社会の良さが失われていくのはあまりにもさびしい。
 だが、東日本大震災時、アメリカ人の友人は被害にあった人々が暴動も起こさず、救援物資をきちんと並んで受け取り、感謝していた姿に感動したと言っていた。このように古き良き日本人の美質は、まだまだ残っている。ぜひ、企業や学校で社員には日本人の勤勉さ、礼儀正しさなどの長所を忘れずに教育してほしいものだ。
 特に、物流業の基礎は人と人との信頼関係にあるのではないかと思っている。しかし、最近ともかく時間内に届ければよいと思っている節のあるドライバーやあいさつもきちんとできない倉庫の作業員を見ると世界に誇る品質の高い物流業がどうなっていくのか不安になる。特に、倉庫業はお客様の大切な貨物を預かり、お客様との信頼関係なしには成立しない仕事だ。倉庫マンは、お客様の荷物に愛着を持っており、大切に大切に貨物を預かり、出庫していた。貨物への心遣いがあった。お客様との信頼関係、物を作ってくれた人への感謝の気持ちなど日本人の長所が必要な仕事だ。今の若い経営者にも、昔の倉庫業の良さをなくさず、社員を教育し、利益と共に立派な社会人を育成するという社会的使命を果たしてほしいと思っている。
 私は、現在埼玉県の学生を支援する大平奨学会で学金を出すだけでなく、日本人の良さを忘れない学生たちを育英するという同会の理念にのっとった運営をしていきたい。良き社会人になるには多感な10代までに質の高い教育を受けることが大変重要だと思っている。こういった社会に貢献する事業を盛りたてていけるよう12月中旬には奨学会のHPも立ち上げる。私のライフワークである日本人の美質を忘れない教育を支援していきたい。
 亡き父、先代の東京倉庫運輸社長の池田新一は「湖の水は、川へ流れ、川の水は海へ注がれる。海の水は蒸発して、雨になり、湖へ落ちる。この世のすべては循環する。恩も教育も愛情もそういったものだ」と教えてくれた。私も教育事業や物流業への協力を通じ、この世の良きものの循環に貢献していきたいと思う。

<プロフィール>
 池田光男 1969年5月米国オクラホマ州立大学大学院卒業後、米国での会社勤務を経て、71年11月東運開発専務取締役、87年5月代表取締役に就任。72年4月東京倉庫運輸社長室長、89年6月常務取締役、91年6月取締役副社長などを歴任し、現在、東運開発代表取締役社長。Council of Supply Chain Management Professionals(CSCMP)会員、国際委員などを歴任。現在大平奨学会理事長。