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書面契約義務化▼事業者から「期待」と「反発」 

2013年03月19日

 【輸送経済(http://www.yuso.co.jp)】
 実運送の取引適正化と安全確保のため、国土交通省が義務化に向け動き出した「書面契約」(2月26日付『輸送経済』1面を参照)。事業者からは書面化に一定の効果を期待する声がある一方、スポット業務で〝事前に〟書面化する難しさや負担増加を心配する声が。車建て契約でない「特積み」には当てはまらないとの意見も聞かれる。書面化は、業界に残る不透明な値決め方法や、中小零細中心の実運送業者の弱い立場の是正につながるのか。
 「基本的な契約内容を記した従来の〝運送約款〟に加え、新たな書面化で委託日・受託日、配送時間などが具体的に明記されれば、荷主との関係、元請け・下請けの関係で責任の白黒をはっきりさせられるのでは」と都内の中堅物流企業。
 特に「運送依頼を請けた後に運賃を決めるような零細企業が契約内容をきちんと把握するのは良いことでは」(同社)。
安全と適正取引は表裏一体
 今回の書面化の動きは昨秋まで行われた運賃と最適車両数に関する有識者会議での提言を受けたもの。国交省は「営業用自動車の安全と適正取引は表裏一体」との考え。運賃・料金に加算されずコスト増加につながる荷待ちや積み降ろしなどの付帯作業が、企業の安全管理費抑制やドライバーの超過勤務の一因だとして、多層構造を踏まえた厳しい実運送の現状見直しを図ろうとしている。
実効性疑問視する声が
 だが、ある九州の中堅企業は「書面契約の義務化に賛成」としつつも、「荷主都合で荷待ちや付帯作業が発生しているが、料金になかなか反映できない。中小企業が契約書面化に対応するのは難しいのでは」。
 「メーカーから物流子会社や元請けまでの契約は書面化できても、さらに下の孫請け、ひ孫請けの運賃・付帯作業について書面契約はどこまで機能するか」(日本ローカルネットワークシステム協同組合連合会)とも。
 国交省は、問題を議論する先月末の第一回作業部会で、新たな書面契約を「実運送業者と荷主ら運送委託者間の契約」とした。一方、業界の多層構造の中では、荷主・元請け間の契約料金や、末端の実運送に至る間の運賃の「中抜き」が正確に反映される仕組みでないと、意味がない。実効性を伴わなければ、ただ企業の負担が増えるだけだ。
 「新たな契約書も送り状と同様に収入印紙が要るなら、課税対象になり管理側の負担が増える」(都内の中堅企業)。「弁護士から社員教育が大変になると言われた」(大阪の中規模企業)。
「簡略化」も必要に スポット、特積みで
 定期的な仕事ではなく短期や緊急の取引、いわゆる「スポット」に関し、「下請け法に絡む〝発注書〟は仕事が済んだ後で書面化しており、事前の書面化は非現実的」(都内の別の中堅企業)の声も。本来事前交付が要る発注書だが、「その扱いもままならない」(中堅特積み)現状をどうするのか。
 今回の議論は料金が1台いくらの車建ての「区域」を想定したもので、「特積みには当てはまらない。送り状1件ごとに書面化するのは無理」(日本路線トラック連盟)とも。ただ基本契約に国が示した内容を盛り込むことは可能といい、スポットと合わせ実情を考慮して細部を詰めていくことが重要。書面の中身や書面確認が実際に行われているかのチェックも不可欠だ。
 荷主企業からも基本契約以外での契約書面化は「手間が掛かり、効率が悪くならないよう配慮してほしい」(トヨタ自動車)との要望が出ている。
 国交省は「定期的な荷物にしろスポットや特積みにしろ円滑性を損なわないよう何らかの省略化は検討中」。参入規制強化やGマーク(安全性優良事業所認定)推進などと絡め、適正取引と安全確保を後押ししていく方針。
「まず実現、必要なら見直す」
 「受け渡し方法がはっきりしていない、商流を含めたいまの商取引には問題がある。今回の書面化はそうした商取引の在り方を明確化するための方向付けになるだろう。業界にとって悪い話ではない」(路線連盟)。
 書面契約の内容は4月には細部が固まり、今夏にも省令改正や通達が出される。国交省は「まずは書面化を実現し、状況を見て必要であれば見直しを図る」とする。業界の最大の課題である運賃是正につながるか。議論の行方が注目される。 (矢田 健一郎)