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トラック上場企業決算▼3社に1社「減収減益」 

2013年06月04日

 【輸送経済(http://www.yuso.co.jp)】
 上場トラック企業の平成25年3月期決算が出そろった。減収減益企業が34社中12社と著しく増加。半面、今期予想については27社が増収増益を見込む。
   
25年3月期に増収増益した上場トラック企業は13社。3年振りに半数を下回った。反対に増加したのは減収減益で12社。厳しい経営環境がうかがえる結果となった。
 大手でも、減益が目立つ。上位10社中4社が減収減益。増収減益も合わせると7社に上る。減収減益の背景として、国内経済回復の遅れ、円高による輸出低迷、欧州経済不安、中国景気減速、日中外交摩擦、軽油価格の高止まり、運賃値下げ傾向を挙げる企業が多かった。
8割が増収増益を予測
 一方、今期については約8割の27社が増収増益を予測。米国・中国経済の回復、円安による為替差益での増収といった環境要因に加え、各社は事業の収益性の見直しを積極的に進める姿勢を打ち出す。
 日本通運は今期、上期には輸出貨物を中心とした苦戦を想定しつつ、下期以降の物流需要回復の本格化、国内事業の収益改善を見込む。複合事業の利益率改善、国際関連事業の増収、M&A(企業の合併・買収)効果により売上高4.8%増、営業利益11.4%増を目指す。
 日立物流はM&Aを再開。新規案件の獲得、低迷していた海外事業回復も予想し、過去最高の業績を見込む。
特積みで収益力の改善進む
 福山通運は260億円を投資し、国内拠点増強を加速。共同配送の推進、不採算貨物撤退、業務のスリム化も進め、利益体質の強化を図る。
 トナミホールディングスは昨年度からの中期経営計画の進展で、収益が改善。営業利益、経常利益は前期の約2倍に。第一貨物、久留米運送と合弁で設立した「ジャパン・トランズ・ライン」による幹線運行の共同化も傭(よう)車費削減に寄与した。
 今期、国内は緊急経済対策による景気下支え、震災復興・復旧、消費税増税前の駆け込み需要などを背景に経営環境改善への期待は高い。半面、実体経済への波及がまだ見られないこと、「賃金上昇なきインフレ」による消費の冷え込み、円安に伴う燃料価格高止まりによる収益圧迫、ドライバー不足、海外経済の不安定さを懸念する声も多い。各社とも、さらなる体質強化により業績の改善を図る方針だ。
採算性重視へ転換 野村証券アナリスト 広兼賢治氏
 幹線輸送を行う会社では、1~3月ごろから回復感が見られる。ヤマト運輸は佐川急便が不採算事業から撤退した影響もあり、宅急便の取り扱い個数の増加が加速。
 日通の国際輸送拡大・複合事業の見直し、西濃運輸と福山通運の提携など、各社が戦略を明確化してきている。
 今期予想としては、業績悪化を見込む企業は少ない。物流の数量が落ちる局面は終わったと見られる。
 日通、西濃をはじめ、各社とも目指しているのは利益率の改善。採算性重視の方向に転換を図っている。
 広兼 賢治氏(ひろかね・まさはる) 平成16年慶大大学院政策・メディア科卒、野村証券入社。企業調査部(現エクリティ・リサーチ部)でアナリスト業務に従事。機械業界、住宅設備業界担当を経て、24年6月より運輸業界担当。